バイデン政権の新たな排ガス規制はEV推進かEV後退か:日経と英米紙で逆の見出し
■英ガーディアン紙「今後8年間でEVの劇的増加は確実」
一方、英ガーディアン紙は3月20日、「バイデン大統領、EVセクターを後押しする新たな排ガス規制を発表」と見出しで報じた。 同紙は、米国がGHG排出削減を目指す上で、今回の規制は米国史上、最も重要な気候変動規制の一つだと評価した。 ガーディアン紙もまた、日本経済新聞と同じように、素案からの緩和の背景として、米選挙戦を見据えての自動車業界への譲歩となった点を説明する。 しかし同紙は、「新たな基準は特定の車種の販売を義務付けるものではないが、今後8年間でEVが劇的に増加することはほぼ確実だ」と論じた。 EPAの規制では、8年後の2032年には新車販売台数に占めるEV比率が35~56%を占める。それに対して、2023年の同比率はわずか7.6%だった。同紙は、2032年までの8年間の時間軸で、EV比率の拡大幅にフォーカスを当てた形だ。
■米ニューヨーク・タイムズ紙「EV拡大を目指す規則」
米ニューヨーク・タイムズ紙は3月20日、「バイデン政権、EV拡大を目指す規則を発表」との見出しで報じ、「EPAによる新たな排ガス規制は、米国自動車市場を一変させるだろう」と論じた。 同紙は、英ガーディアン紙同様、米国の新車販売台数に占めるEV比率(7.6%)と、新規制による目標値との差に注目したほか、2023年のEV販売台数が「記録的な」120万台となったことにも触れた。 ニューヨーク・タイムズ紙は、2023年が観測史上最も暑い年となったことにも触れ、輸送部門がそうした気候変動を引き起こしている一因だと説明した。EVについても、バイデン大統領の掲げる気候変動対策の中心的存在とした上で、政治的な争点になっていると補足した。 その上で、「2032年までに、米国で販売される新車の半分以上がゼロ・エミッション車になる可能性が高い」との見方を示した。
■両側面から報じるワシントン・ポスト紙
米ワシントン・ポスト紙は3月20日、「バイデン政権、気候変動問題への最大の一手を通じてEV移行の加速を模索」と見出しをつけた。そして、EPAの最終規則は、EVへの急速な意向を懸念する労働組合への譲歩とEV販売の減速を示唆するものだと報じた。 同紙は、排ガス規制を、「EVシフトへの足踏みが見られる現在の米国でEVの普及を加速するため」と説明し、同時に、「2030年までは、EVの販売を劇的に増やす必要はなくなった」と論じた。 同紙は、米自動車評価会社のケリー・ブルー・ブック社のデータを紹介し、「(EVの販売は)ここ数か月減速している」と説明する。データによると、2023年第4四半期(10-12月)のEV販売台数が、前年同期比40%増(見込み)に対し、その前の第3四半期(7-9月)が同49%増、第2四半期(4-6月)が同52%増だった。 ワシントン・ポスト紙は、逆の見方もあるとして、ゼロ・エミッション交通協会のアルバート・ゴア事務局長(アル・ゴア元副大統領の息子)のコメントも紹介する。 「本当に減速しているかどうかは別として、EVトレンドはここ数年驚異的な成長を見せている」として、2023年のEV販売台数が120万台を記録し、EVシェアが2022年の5.9%から2023年は7.6%になるとのゴア事務局長の指摘を紹介した。 また、EV価格がいまやガソリン車とほとんど変わらない程度にまで急落していることも付け加えた。米調査会社コックス・オートモーティブによると、2024年2月の平均価格差は5000ドル(約75万円)だったという。 オルタナ・オンラインでは、ワシントン・ポスト紙やロイター、フィナンシャル・タイムズ紙やウォール・ストリート・ジャーナル紙の見方についても報じています。 ■ワシントン・ポスト紙が報じたカリフォルニア州の動き ■ロイター「ハイブリッド車ブームを巻き起こす可能性」 ■FTとWSJは「時間的猶予」に着目 ■自動車業界は歓迎 ■環境団体の反応は賛否両論