2024年の民放ドラマ、最も演技が良かった助演男優は?(1)リアルな芝居が最高だった…世間に発見された天才
2024年も数々の名作が生まれた。中でも、ここ数年の民放ドラマの勢いは凄い。各局がこぞってヒット作を生み出そうとしている熱意が画面越しに伝わり、それに伴い役者陣のパフォーマンスもより充実しているように思える。そこで今回は、2024年のドラマで印象を残した“助演俳優”を5人セレクトして紹介する。第1回。(文・まっつ)
●若葉竜也『アンメット ある脳外科医の日記』
2024年、世間に最も「見つかった」俳優はこの人ではないだろうか。 自分自身の性質を理解して民放ドラマにはほとんど出演しないという方針を取っていたが、制作陣の直談判もあり、春クール『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)に出演。アメリカの大学病院からやってきた優秀な脳外科医でありながら、変人とも称される三瓶友治を演じた。 彼の演技力に関して何から説明すべきか逡巡してしまうが、一言で言えば圧倒的なリアリティだ。無精ひげでボソボソと喋る三瓶は一見ドラマには似つかわしくない印象を受けるが、だからこそ実際にこの世界にいる人間かのように錯覚させ、本物の医師であるという現実感を生む。 ドラマ全体としても極限まで無駄なセリフを省き、視聴者のリテラシーを上げた同作品。それを成し得たのも若葉と、ミヤビを演じた主演の杉咲花の演技力の賜物で、この作品のハイライトとなっているのが第9話のラストシーンだ。三瓶とミヤビによる2人っきりのシーンは長回しとなっており、あまりに自然な会話から、こちらが盗み見ているような気にさえなってしまう。 そんな中でも、三瓶がぽつりぽつりと自身の過去をさらけ出していく、重度の障害を抱えていて亡くなった兄を思い出しながら語るシーンは、沈黙を存分に使いながら、苦しみ、そして悲しみを表現。これ以上ないと言うほどに人間・三瓶友治を表したドラマ史に残るこの名シーンは、若葉でなければ決して生まれることはなかったはずだ。 (文・まっつ)
まっつ