木野花が思う「男だ、女だ」の前に必要なこと…知られざる”青森のナイチンゲール”の存在
津軽の「じょっぱり」な気概を持ち寄って
新作となる映画『じょっぱり』で木野さんが演じたのは、兵士や県民の命と健康を守るため、我が身を顧みず「保健と看護」に尽力した花田ミキさん。「じょっぱり」とは津軽弁で「意地っ張り、頑固もの」という意味で、人命を守るためならどんな権威ある相手であってもひるまずに、確固たる信念を貫いた花田さんの姿勢を表す言葉でもある。木野さんにも、「じょっぱり」な部分があるという。 「この映画を演出した五十嵐匠監督とは、いい時期にお会いしたと思います。五十嵐監督も作品に対して熱い思いをお持ちだから、若いころだったらじょっぱりとじょっぱりがぶつかって、きっと大変だったんじゃないかな。私は役者でもあるけれど演出家でもあるので、どうしても演出の目で台本を読んでしまう。今回も撮影中、監督と率直に話しあえたらと願っていましたが、五十嵐監督は、演技に関して俳優にゆだねる気持ちをお持ちの方で、とても自由で有意義な話し合いができたと思います。 人間誰しも、60歳を過ぎる頃には人の話に耳を傾けたほうがいいとわかってくる。自分の意見なんてたかが知れているから、一緒に何かを作る時は互いの考えやアイデアを出し合い、共有して、自分たちの作品にしていく時間が大事だと思うようになりました」 花田さんは、戦後、僻地まで村の家々を訪問する派遣保健婦制度を推進した保健指導者としても全国的に有名な人だった。戦時中には従軍看護婦として戦地に三度渡り、助けても再び戦地に戻り命を落としてしまう兵隊たちを葛藤の中で看護を続けた。青森に戻ってからは、ポリオワクチンがない中で占領軍のナースからケニー療法を学んで多くの子どもたちを救い、青森県立青森高等看護学院(現在の青森県立保健大学)の設立にも尽力している。 「看護や保健の分野で活躍した方で、“青森のナイチンゲール”と呼ばれるほどの功績の数々をお持ちです。こんなに素晴らしい人が青森にいたのか、なぜこれまで知らなかったのかと驚きました」