キリン「晴れ風」が絶好調 “ビール好き”以外をどうやって取り込んだ?
既存商品との“カニバリ”はないのか?
キリンはビールのブランドとして「一番搾り」と「ラガービール」を擁する。今回の晴れ風はどういった位置付けなのか。 「スタンダードビールとしては、晴れ風を、一番搾りに次ぐ、当社の第二の柱に育てていきたいと考えています。創業以来、ラガービールも代表的な商品として支持されていますので、ずっと残していきたいです。しかし物量として、世の中に広くお客さまにアプローチしていく観点では、一番搾りと晴れ風が大きな商品となります」 この3つは缶の色が異なるものの、デザインはほぼ同じだ。カニバリゼーションが起こりそうなものだが「同じスタンダードビールなので一定程度は、そうなると考えていました。ただ、一番搾りとは異なる価値を感じていただけているので、(カニバリは)想定の範囲内にとどまっています」と話す。
寄付という新しい価値を提供 定番化を目指す
晴れ風では「晴れ風ACTION」という新しい取り組みを実施している。缶にはQRコードがついており、サイトにアクセスすると1回0.5円分の「晴れ風コイン」がもらえ、それを支援したい自治体に寄付できる仕組みだ。 ビールと花火大会の相性がいいのは想像がつくと思うが、例えば花火大会は新型コロナ後、諸事情で中止となるケースも散見される。 「花火大会が物価高騰で中止になったり、桜の木が老齢化して切り倒す必要があったりと、存続の危機を迎えている風物詩が少なくありません。新ビールとして何か恩返しがしたい思いがありました」と晴れ風の売上高の一部を寄付することによって日本の風物詩を守ろうとしているという。 「もう1つ狙いがあります。若者などビールをあまり飲まない人に、ビールっていいなと思ってもらいたいのです。SDGsに関心の高い若者が、晴れ風を飲むだけで社会にちょっと良いことができて、明るく前向きな気持ちになってもらうことを狙いました」 それを感じるのがXだ。「『どこどこに寄付しました』という寄付についての報告ツイートがあがったりするのです。ビールなんですけど、今までにない見方をされているのだなと感じています」 「ちょっと私、いいことしたな」と思う人を多く作ることがLTV(顧客生涯価値)向上につながるとも考えているそうだ。「LTVを高めたり、長くお客さまにブランドを愛してもらったりするために社会貢献を担うことは、大きな意義があり、チャレンジだと思っています」 結局のところ、マーケティングとしての社会貢献ではなく、ビール会社として社会貢献をしたいという発想が重要なのだろう。寄付金の分配方法については、自治体向けに公募し、1都道府県あたり1自治体を選定している。「各自治体からの応募内容や寄付金の使い道について、専門家が所属する事務局で精査して選びます。皆さんにそれぞれの思いを書いてもらっていますが、日本にはいろんな課題があるのだと実感しました」 これまで桜と花火の支援をしてきた。今後もこの2つを長期的にしっかり支えていきたいと考えている。「単年だけお金の支援をしても、今年は花火大会をできたけど来年はできないといった事態になる可能性もあるからです」