《結束バンド》メンバーが語る、『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!』と結束バンドの今、新曲の聴きどころなど徹底解剖
アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の劇中バンドにとどまらず、フェスへの出演やツアーの開催など、幅広い活躍を見せる《結束バンド》。 【動画】【Lyric Video】結束バンド「月並みに輝け」/ 「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:」オープニングテーマ 6月7日に公開された『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』(前編)に続き、8月9日には『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』(後編)が公開され、大きな話題を呼んでいる。 さらに8月14日には劇場総集編のオープニングテーマとエンディングテーマ、カップリングを含む全6曲を収めたミニアルバム『Re:結束バンド』がリリースされる。 この記事では、青山吉能(後藤ひとり役)、鈴代紗弓(伊地知虹夏役)、水野朔(山田リョウ役)、長谷川育美(喜多郁代役)の4人へのインタビューをもとに、『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!』と新曲について、それぞれのおすすめ曲について紹介する。 ■結束バンドとは? ◎結束バンド(読み:けっそくバンド) ・メンバー:後藤ひとり / 伊地知虹夏 / 山田リョウ / 喜多郁代 ■メンバープロフィール 後藤ひとり(読み:ごとうひとり) ・声:青山吉能 ・ポジション:リードギター 伊地知 虹夏(読み:いじち にじか) ・声:鈴代紗弓 ・ポジション:ドラム 山田 リョウ(読み:やまだ リョウ) ・声:水野朔 ・ポジション:ベース 喜多 郁代(読み:きた いくよ) ・声:長谷川育美 ・ポジション:ギター・ボーカル ■活動が続いて生まれた特別な絆 結束バンドとは、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場するバンド。 当初はあくまで劇中だけに登場する存在だったが、アニメの放送終了後はリアルな音楽活動を展開し、人気を広げてきた。2023年5月21日には初のワンマンライブ『結束バンドLIVE-恒星-』をZepp Haneda (TOKYO)にて開催し、2024年5月4日には野外音楽フェス『JAPAN JAM2024』に出演。8月4日には国内最大級の野外フェス『ROCK IN JAPAN FESTIVAL2024』への出演も果たした。 後藤ひとり役の青山吉能、伊地知虹夏役の鈴代紗弓、山田リョウ役の水野朔、喜多郁代役の長谷川育美の4人にとっても、結束バンドという存在は、アニメの放送終了後から少しずつ変わってきているようだ。 「アニメの放送はもう2年くらい前に終わっているのに、ずっと続いている感じというか、日常になってきているイメージですね」(鈴代) 「正直、去年のワンマンライブ『結束バンドLIVE-恒星-』が終わった時に、私の中ではそこで一回終わった感じがあったんです。でも、全然終わってない。不思議です」(青山) 「常日頃『ぼっち・ざ・ろっく!』の何かしらの活動があったりするので。前は一個一個の仕事をやるたびに『これでしばらく稼働はないかも』と思っていたけど、今はなくなることが想像できないくらいで。生活の中にあることが当たり前になりすぎてます」(長谷川) 活動が続いていくうちに、4人の中にも特別な関係が生まれてきたという。 「チームというか、メンバーって思うようになったかもしれない。声優って結局個人仕事で、作品に入ってもワンクールで終わりだったりすると短期間での共演になってしまうので、チームみたいな感覚、メンバーっていう感覚って、あんまりないんです。だから初めてできた存在って感じがします」(長谷川) 「特殊だなって思います」(水野) 「身内感がありますね。みんなの波長が合うというか、居心地の良さがあるというか」(鈴代) 「長く続いてくれるからこそできた絆だなと思います」(青山) ■『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』オープニングテーマ「月並みに輝け」 ここからは結束バンドの新曲について紹介していきたい。まずは『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:』オープニングテーマの「月並みに輝け」。作詞:樋口愛、作曲:音羽-otoha-、編曲:三井律郎という「青春コンプレックス」も手掛けた布陣が担当している。 「天才だって信じてた」という歌い出しのフレーズが印象的なこの曲。「『ぼっち・ざ・ろっく!』のアニメのエピソードをめちゃくちゃ思い出されるような歌詞なんです」と長谷川は言う。 「ぼっちちゃんが最初、自分の押し入れにこもって、そこで自分の才能を信じていて。でも、それがちょっと違ったっていうことに気付いたこととか。あと公園で虹花ちゃんに出会うシーンが頭に浮かんでくるような歌詞の作りになってるのがすごいなって思って。だからこそ、総集編の前編の主題歌になってるのがぴったりだと思います」(長谷川) 熱量の高いギターサウンドに乗せてエモーショナルな歌声が響くこの曲。『ぼっち・ざ・ろっく!』を知らない人でも思いを重ねることができるようなポテンシャルを持っている。 「作品外でも、いろんな人が共感できるような歌だろうなと思います。誰でも自分のことを天才だって思ってる時期ってあると思うんですけれど、でも、結局折られるんですよね。自分の世界だけで判断してるから、大きく広いところに出た時に『あれ? いろんな人がいるな、自分ってそうでもないんだ』みたいなことに気付く。で、そこから頑張っていくと、可能性って一つじゃないし、自分の中にも特別なものがあることに気付ける瞬間がある。『月並みに輝け』を聴くと励まされるなって思います」(長谷川) ■『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』エンディングテーマ「今、僕、アンダーグラウンドから」 『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』エンディングテーマの「今、僕、アンダーグラウンドから」は、作詞・作曲:北澤ゆうほ、編曲:三井律郎のタッグで制作。 この曲の聴き所は後半の落ちサビのところにあるという。 「律郎さんの編曲の仕方にめっちゃ感動しました。落ちサビのところで一回エレキギターの生音になるんです。それがちょうど歌詞的にも『狭くて暗いこの箱の中なら』という、押し入れの中でぼっちちゃんが弾いてる様が思い浮かぶようになっていて。こういう作り方あるんだって思いました。律郎さんの話を聞いてるとキャラ理解がすごいんですよ。私たちも役作りをするけど、律郎さんは音楽面での役作りをめちゃくちゃしてらっしゃって。そういう風に、作品のキャラクターがやってるバンドだからこそ魅力となる音なんだろうなって思いました」(長谷川) ■『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』オープニングテーマ「ドッペルゲンガー」 『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:』(前編)の最後のシーンは、結束バンドが初めて4人でステージに立った台風の日の模様が描かれる。物語のひとつのターニングポイントとなっているその日のライブのセットリストは、1曲目に披露した「ギターと孤独と蒼い惑星」、2曲目の「あのバンド」。そして、これまでアニメでは描かれなかった3曲目があった。それが新曲の「ドッペルゲンガー」だ。 この曲が『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』のオープニングテーマとなっている。 「みなさんがアニメを観ていた時に気になっていたであろう、台風ライブの3曲目というのがあって。総集編の前編でも、1曲目の『ギターと孤独と蒼い惑星』でグチャグチャだったのが2曲目の『あのバンド』で持ち直して。『じゃあ次、ラストの曲です!』っていうセリフでライブの場面は終わってるんですけど。そこから後編のオープニングにつながるんです。私、この曲のレコーディングの日にそれを聞いたんです。『これ、3曲目になるかも』『えー!?』って」(長谷川) 「ドッペルゲンガー」は、作詞:樋口愛、作曲:飛内将大、編曲:三井律郎というタッグが制作。テクニカルなギターフレーズ、そして自分の内面と向き合うような歌詞のフレーズが印象的だ。 「作詞したてのぼっちちゃんが『ギターと孤独と蒼い惑星』と『あのバンド』を書いてたときの流れっぽい楽曲になってるなって思って。その時系列感も楽しんでもらえるんじゃないかなって思ってます。『ドッペルゲンガー』っていうタイトル通り、もう一人の自分と向き合っているような歌詞で。後藤ひとりだからこその歌詞だなって思いました」(長谷川) ■『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』エンディングテーマ「Re:Re:」 『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:Re:』のエンディングテーマは「Re:Re:」。結束バンドによるASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバー楽曲だ。 TVアニメ第12話のエンディングは、後藤ひとり(声:青山吉能)がボーカルを担当したASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバー「転がる岩、君に朝が降る」。劇場総集編のエンディングも、やはり同じスタイルでのASIAN KUNG-FU GENERATIONの代表曲のカバーとなった。 「後藤は絶対に歌を歌わないキャラクターなので、歌うシチュエーションみたいなものをめちゃくちゃ考えないと歌が歌えないんです」と青山は言う。 「予想されていた方もいたと思うんですけれど、劇場総集編のタイトルが『Re:Re』になるって聞いたときから『これはもしや?』という勘が働いて。なんとなくASIAN KUNG-FU GENERATIONさんの原曲を聴いてたんですけど。やっぱ後藤ひとりとして歌う正解みたいなものが自分の中で全く確立できなくて。『転がる岩、君に朝が降る』の時もそうでしたけど、サウンドプロデューサーの岡村弦さんと編曲の三井律郎さんと話し合いながら、かなり揉みながら歌を作っていきました」 「転がる岩、君に朝が降る」に比べて、「Re:Re:」のカバーはクリアで力強い歌声が印象的だ。 「今回は歌詞もパキッとしているというか、ハッキリとものを言っている感じがしたので。『転がる岩、君に朝が降る』を歌うということを乗り越えた後藤が歌っているんだ、という。いろいろ作詞の経験も積んでいるし、現実世界では結束バンドはフェスとかにも出ているし、そういう経験を全部含めてリアルとアニメと漫画を自分の中に入れ込んで歌った結果があれになったという。『転がる岩、君に朝が降る』の時よりも自信を持っている後藤になっているように聞こえていたら嬉しいなと思います」(青山) ■メンバーそれぞれのおすすめ曲 これまでに発表された結束バンドの数々の楽曲の中で、4人それぞれ個人的に思い入れのある曲についても語ってもらった。 水野は「私はやっぱり『星座になれたら』が一番好きです」と言う。 「アニメの中での大切なシーンの曲だから好きって言うのももちろんあるんですが、ぼっちちゃんが書いた歌詞で喜多ちゃんが歌ってるっていう背景を考えると、さらにエモいというか、すごい深い楽曲だなっていうのがわかって。一番好きですね」(水野) 鈴代は「今まで一番自分に刺さる曲は『小さな海』だったんですけど、今回、劇場総集編を観て「この曲ヤバいわ」って改めて感じた曲が『あのバンド』でした」とのことだ。 「TVアニメの時はぼっちちゃんのモノローグが重なってたんですけど、総集編の前編ではモノローグがなく音だけになっていて、そこでまた新しく『あのバンド』の見え方が変わって。それ以降『歌ってみた』とか『弾いてみた』みたいな動画を漁りまくってました。自分がもしバンドマンだったら絶対一回はチャレンジしたい曲だなって思います」(鈴代) 長谷川は「私も『小さな海』は私自身の曲と思うくらい好きでいつも挙げてたんですけれど」と言いつつ、「忘れてやらない」をセレクトしてくれた。 「『忘れてやらない』は、歌っててシンプルに楽しいからめっちゃ好きです。結束バンドの色を出しつつも喜多ちゃんの魅力もすごく表しやすい曲だなっていうのもあって。ライブで歌う時も、ニコニコして、キラッとしながら歌いたくなるというか、自然とそうなれる。より喜多ちゃんが乗っかって一心同体になってる感覚がある曲だなって思います」(長谷川) 青山も「私もこういう質問に対して毎度『小さな海』と答えてきたんですけど、天邪鬼なものですから『小さな海』と答えるのはもうやめます」と言い、「月並みに輝け」を挙げてくれた。 「『天才だって信じてた』という言葉があまりにも刺さりすぎていて、私も本当に自分のことを天才だと信じてたんですね。熊本が生んだ奇跡だと思って、声優を目指して。声優になって10年くらい経って、この作品に出会って。結束バンドの曲には自分と重ねてしまう曲がかなり多いんですけど、『月並みに輝け』は自分の人生にも照らし合わせてしまう楽曲だと思います。そもそも後藤ひとりとの出会いが私の人生を変えてくれた出会いでもあった中で、この曲に出会って、より後藤ひとりとのシンパシーみたいなものを感じました。自分は天才ではなくて挫折ばっかりだったけど、こういう幸せもあるんだっていうものに出会えたっていうことを思い出させてくれた曲だなって思います」(青山) ■ツアー『結束バンド ZEPP TOUR 2024 “We will”』とこの先への思い 秋から冬にかけては全国ツアー『結束バンド ZEPP TOUR 2024 “We will”』も開催される。この先の結束バンドと『ぼっち・ざ・ろっく!』にどんな思いを持っているかについても語ってもらった。 「今までも想像できなかったことしか起きてきてなくて、だからどうなっていくのか予想もつかない存在で。逆にそれを楽しみたいというか。どうなってもそれを最大限にお客さんに楽しんでいただけるように表現していきたい。それだけです」(長谷川) 「これから先どんどん自分もスキルアップするために先輩方の背中を見ながら頑張っていきたいなと思います」(水野) 「やっぱり原作があって、アニメの素晴らしいストーリーとか演出とか音楽があった上で今に繋がっているので。自分的にはその先を演じてみたいし、演じた先に新しい曲とか新しいシーンとかがあったらやっぱり幸せですし、長く『ぼっち・ざ・ろっく!』という作品が止まることなく世界中に広がっていったら、とっても幸せなことだなって思います」(鈴代) 「本当に正直な話をすると、大きくなっていくのが怖いというのがあって。大きくなっていくということはいずれ小さくなっていくことなんじゃないかって思った時に、その変化がすごく怖くて。でもありがたいことに、そのウジウジ怖がっている自分をファンの皆さんだったり『ぼっち・ざ・ろっく!』を好きな皆さんがすごく引っ張ってくださって。だからこそそんな皆さんの期待に応えたいし、いろんなものに対する自信をつけたいなって思っています」(青山) まだまだ結束バンドから目が離せない時期は続きそうだ。 TEXT BY 柴 那典
THE FIRST TIMES編集部