PK戦で狭山ヶ丘を振り切り3回戦進出。苦闘続くも、伝統校・武南はトレーニングと準備を大切にまた成長して次戦へ:埼玉
[10.20 選手権埼玉県予選2回戦 武南高 0-0(PK4-2)狭山ヶ丘高 細田学園第2G] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 第103回全国高校サッカー選手権埼玉県予選2回戦が20日に行われ、県新人戦優勝校の武南高が狭山ヶ丘高に0-0(PK4-2)で勝利した。武南は26日の3回戦で立教新座高と戦う。 武南が苦しみながらも2回戦を突破した。センス、上手さを一際表現する10番MF有川達琉(2年)と攻守両面での察知力やテクニック、強さの光る注目1年生MF小山一絆、展開力も見せたMF佐藤颯(3年)を中心に近い距離感でビルドアップ。抜け目のない動きでゴール前に顔を出す左SB田中理月(2年)らが崩しに係わり、得点を目指した。 開始9分にPKを獲得。だが、有川の右足シュートを狭山ヶ丘GK小池悠希(3年)に止められると、今年1年間の課題とこの日も向き合うことになった。今年は県新人戦で西武台高と両校優勝も、関東大会予選はベスト8、インターハイ予選はベスト16で敗退。県1部リーグでは4勝4分8敗の8位と苦戦している。 内野慎一郎監督は「夏でやっぱり色々本人たちも一生懸命やっているんですけど、やっぱりもう一歩、自分たちの壁を壊せなかった部分があった」と指摘する。勝利の確率を上げるために、伝統の判断力と技術力を大切にしながらチームを強化。だが、チャンスを作りながらも決め切れない課題をなかなか改善することができていない。 23分には、FW大熊來瑠(3年)とMF長谷川渉(3年)のコンビで右サイドを攻略。また、25分に有川がドリブルから左足を振り抜き、40分には右サイドをワンツーで打開した長谷川のラストパスを田中が狙う。だが、このシュートをGK小池に阻まれるなど1点が遠かった。 また、MF畑乙雅(3年)や大熊、小山が相手DF間へ割って入ろうとし、有川、長谷川が相手の逆を取って潜り込もうとしていたが、狭山ヶ丘は相手ボールホルダーに対し、2人がかりでの守備を徹底。1人目が簡単には剥がされずに食らいつき、2人目でドリブルやパスをカットしたほか、DF裏へ抜け出してくる選手への対応も怠らない。 その狭山ヶ丘は、MF田村一颯(3年)のタックルや185cmCB平田葵一(2年)の奪い返しから、前線でボールを収めるFW池田翔(3年)を起点とした速攻にチャレンジしていた。 武南は後半2分にも有川がドリブルシュートを枠へ飛ばし、17分には佐藤のスルーパスから田中が決定的な左足シュート。20分には、ともに守りの中心かつビルドアップの起点となっていた杉浦陸玖(3年)と土屋愉生(3年)の両CBなどを組み替える。杉浦、佐藤、そして畑をCB海老原成琉(3年)、MF川崎悠斗(3年)、期待の1年生ドリブラーMF渡辺悠へ3枚替え。攻守に落ち着いていた右SB今平啓太(1年)をCB、土屋を左SB、田中をボランチへ移行するなど、大きくポジションを変えて攻め直した。 一方、MF浅見來輝(2年)らが献身的に走る狭山ヶ丘は26分、田村の左CKからファーの右SB山口暖人(3年)がニアポスト直撃のヘッド。この後、武南はDF背後を狙う川崎が連続でシュートへ持ち込み、応援団と一体になって戦う狭山ヶ丘も相手ボールを引っ掛けると細田陸(3年)やMF草野大和主将(3年)が人数をかけたカウンター攻撃を繰り出して会場を沸かせていた。 武南は後半40+1分、有川のラストパスから小山が左足シュートを放つも枠右。延長前半3分には、川崎の左足シュートが左隅のコースを捉えた。だが、狭山ヶ丘GK小島が指先で触れるビッグセーブ。武南は計21本のシュートを放ったが、疲れもあってかボールを失うシーンも増えて得点を奪えなかった。ただし、けが人や足を攣らせる選手が出た狭山ヶ丘に1点を許さず。0-0のまま延長後半を終え、試合はPK戦決着となった。 PK戦は先攻・狭山ヶ丘1人目のシュートが左ポストを直撃。また、3人目を武南のゲーム主将GK村上拓夢(3年)が右へ跳んでストップする。一方の武南は大熊、有川、土屋が決めると、最後は海老原が決めて勝利。勝利の瞬間、涙を見せていた村上は「安心の涙なんですけど、チームのみんなに感謝しているのと、自分たちはもっと上のレベル目指しているんで、狭山ヶ丘の人たちのためにも、ここを土台にして次も勝って、(準々決勝以降の)スタジアム、もっと上を目指して頑張っていきたいです」と力を込めた。 内野監督は、「PKの対策もちゃんとしてきたし、細かいところはまだ全然話にならないところがあったりするところもあるけども、でも、こうやって1つ1つ、この短い期間で成長していけばいいかなっていう風には思います。『普段の練習だ』って、(選手にも)話しましたけれど、やっぱトレーニングで解決するってことは大切だから。試合が来たら『やろうぜ』じゃなくて、やっぱ準備っていうのが大切なので」とコメント。内野監督と同学年で、前・浦和北高監督の古市元喜コーチが今年からスタッフに加わり、意見交換しながらチーム作りを進めてきた。また、出た課題から目を背けず、次戦まで一週間、準備していく。 村上は「今回、失点はなかったんで、守備の面はこのまま継続していって、攻撃の面ではクロスボール、接点がちゃんと合う人がいなかったんで合わせられるようにやっていくのと、やり切れないところが課題なんで。攻撃の厚みを持ってできるように練習に1日1日取り組んでいきたいです」。苦しいシーズンだったが、自分たちが取り組んできたことに「みんな自信を持っている」(村上)という。苦闘も糧に、一つ一つ積み重ねながら伝統校・武南は勝ち上がる。