利上げは「引き締め転換でない」、情報発信丁寧に-日銀3月会合
(ブルームバーグ): 日本銀行が3月18、19日に開いた金融政策決定会合では、17年ぶりの利上げ決定に当たり、金融市場に大きな変動が生じないよう、先行きの金融政策運営などについて丁寧な情報発信の重要性を指摘する声が相次いだ。2日に議事要旨を公表した。
日銀は同会合で2%の物価安定目標の実現が見通せる状況に至ったとして、世界最後のマイナス金利の解除などを決めた。ただ、実現したとの判断ではない中で、政策委員は「現在の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えられる」との認識を共有した。
何人かの委員は、今回の政策変更は「米欧のような金融引き締め局面への転換とは異なる」「金融緩和から急速な利上げに転換したとの誤解が広がることがないよう、丁寧な情報発信が重要」と指摘。1人の委員は「金融引き締めへのレジーム転換ではなく、あくまで 物価安定の目標の実現に向けた取り組みの一環である」と明確に伝えていくことが重要だと強調した。
会合ではイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の廃止や上場投資信託(ETF)の新規購入の終了も決定したが、日銀が金融政策の正常化に踏み出したにもかかわらず、29日の外国為替市場で34年ぶりの1ドル=160円台まで円安が進んだ。こうした日銀の慎重な情報発信も円安につながっている面がありそうだ。
ノルム
国債買い入れについては、多くの委員が「長期金利は金融市場において形成されることが基本となる」とし、長期金利の買い入れにおいて不連続が生じないようにすることが適当との認識を共有。何人かの委員は、将来的に国債の買い入れ額を減額し、国債保有残高も償還に伴って縮小させていくことが望ましいとの見解を示した。
政策変更の前提となった賃金・物価動向に関しては、連合による春闘の初回集計が33年ぶりに5%を超えたことを受け、「物価から賃金への波及メカニズムの持続性を示唆する結果だ」「賃金が上がりにくいとのノルムが転換した可能性がある」などの指摘があった。何人かの委員は、大企業の高水準の賃上げによって「中小企業においても賃上げの動きが広がることが期待される」と述べた。