万感胸にせまる「プレーヤー」たちの自立的な行動と、加齢による変化。老いとBA.2(後編)【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
■加齢に伴う変化 「歳をとると涙腺が緩む」という話をしたが、加齢に伴う変化はさまざまである。いろいろな物事の捉え方や考え方も変わるし、体質も変わる。 20歳くらいの頃と比べて、大きく変わった私の体質はふたつある。 ひとつめは、乗り物に対する感覚。「旅をする」ということは昔から好きだったが、「乗り物に乗る」ことは実は苦手だった(自転車は好きだったが)。 特に飛行機。大学生の頃、バックパックを背負って、イギリスに2週間ほどのひとり旅に出たことがある。ロンドンに初めて飛んだときには、「10時間」という飛行時間に絶望した。興奮と緊張からかうまく眠ることもできず、真っ暗闇のエコノミークラスのシートで、気が狂いそうになったのをよく覚えている。加えて私は、子供の頃から乗り物酔いしやすく、飛行機や電車など、乗り物に乗るのが得意ではなかった(新幹線ですら酔っていた)。 それがいつの頃からか、乗り物にもほとんど酔わなくなったし、乗り物の中でのいろいろな時間の使い方も覚えた。この連載コラムでも散々紹介しているように、飛行機や電車を乗り回し、世界中を旅するようになった。これも私にとっては、加齢に伴う体質の変化のおかげである。 そしてふたつ目は、飲酒。おそらくこの話をすると、大学時代の私を知る友人たちは、「そうそう、こいつはめっちゃ酒弱かった」と回顧するだろうし、現在の私を知る人たちは、逆の意味で驚くと思う。これは単純な「加齢」だけの影響ではないような気もするが、私はそもそも、ほとんど酒が飲めなかった。20歳になったばかりの頃は、缶コーヒーサイズのビールを1本飲んだだけでつぶれてしまうくらいに弱かった。 それが、研究室生活を始めた大学4年生の頃から、なんとなく「家に帰ったらたまには晩酌」という習慣ができ始めた。そもそも弱いのでコスパもさほど悪くなく、飲んでも1日に350mLの発泡酒を1本。 ......だったのが、実験の失敗や疲労などのストレスが溜まるにつれ、350mLの発泡酒が500mLに、350mLが2本に、3本に、4本に......とエスカレートしていき、いつの間にか結構な量の酒が飲めるようになったのであった。 この連載コラムのどこかで、「研究室生活を始めたら忙しくなって日記をつけるのをやめた」という話を紹介したかと記憶しているが、だんだんと増える飲酒の量に伴って、だんだん筆の呂律が回らなくなり、書くのをやめてしまったようなところもあったような気もする。 ともあれ、そんな大学4年生の卒業研究をしていたの頃の生活も、もう20年も前の話である。いやはやいやはや......。 文/佐藤 佳 写真/PIXTA