最初で最後の公式戦 コロナで独自大会辞退の県岐阜商 センバツ交流試合
2020年甲子園高校野球交流試合で第2日第3試合に登場した県岐阜商は、校内で新型コロナウイルス感染者が複数判明したため、野球部の感染者はいなかったが7月からの岐阜県独自大会の出場を辞退。3年生にとっては交流試合が今季最初で最後の公式戦となった。3年生として戦った唯一の公式戦は2―4で敗れたが、ナインは「甲子園は特別だった」と感慨深く球場を見つめた。 【県岐阜商-明豊】熱戦を写真で 1―4で追い詰められた九回裏、県岐阜商の主軸・佐々木泰主将(3年)が、左中間に交流試合第1号の本塁打を放った。記録員でベンチの真ん中付近でスコアを付けていた松村海星マネジャー(3年)の記録を付ける手にこの日一番の思いがこもった。 「夢を奪ってしまい申し訳ない」。夏の選手権大会中止が決まった5月20日夕方、鍛治舎巧監督がオンラインミーティングで3年生部員25人に言った言葉に、松村さんは強く反応。「こんなことは僕たちの代だけにしてほしい。後輩たちには同じ思いをしてほしくない。監督、よろしくお願いします」と返し、監督を涙ぐませた。涙を流し、言葉が出ない選手もいて会話にならなかったが、自身は選手の前で泣くことはできなかった。 追い打ちを掛けるように7月中旬に同校で新型コロナ感染者が判明し、授業と部活動を再開したのは同30日。松村さんは「自分たちにはどうしようもない、目標を交流試合で勝つことに切り替え、頑張るしかない」と言い聞かせた。紆余(うよ)曲折があり、迎えた甲子園の舞台。「全力で戦い抜き、3年間の集大成の試合にしてほしい」とベンチから願った。 2打席無安打だった神川真之介選手(3年)は、今春開催予定のセンバツではじめてベンチ入りを決めた。だが、コロナ禍で活躍の機会を奪われて「理解はできたけど、絶望的な気持ちになった」と振り返る。そんな過程を経て甲子園の打席にたった。「やっぱり特別な場所だった」と振り返り、「東邦(愛知)との引退試合では安打を打って高校野球を笑顔で終えたい」と笑った。 佐々木主将は「次のステージに向けて鍛え直していきたい」とさらに上を目指して前を向き、2番手で登板した松野匠馬投手(2年)は「3年生が交流試合に出場できてよかった。秋の大会では勝って先輩たちに恥ずかしくないチームを作りたい」と先輩たちの思いを引き継いでいく強い意志を示した。 【隈元悠太、荻野公一】