<一歩一歩・龍谷大平安センバツへの軌跡>/下 「最強」大阪桐蔭戦、手応えも 次に向けスキルアップ /京都
「一気に逆転するぞ」。原田英彦監督がナインを鼓舞した。 2022年11月3日の、近畿地区大会準決勝。龍谷大平安は、多くの関係者から「大会最強」と目されていた大阪桐蔭と相対し、勝利に手をかけていた。 2点を追う九回裏の攻撃、無死から四球と白石力翔(2年)の左中間二塁打で二、三塁の絶好機。エース桑江駿成(2年)に代打を送ったこともあり「一気に勝負をつけなければ勝つのは難しい」という思いは、原田監督と選手たちが共有していた。 好球必打だけを頭に、打席へ向かった。しかし、稲内煕哉(2年)と平中清太郎(2年)は、いずれもフルカウントまで粘ったが三振。4番・山下慶士(2年)が左飛に倒れ、秋の戦いは終わった。 それでも、登板した5人全員が最速140キロ超のボールを投じた相手投手陣に食い下がり、一回は第1ストライクを積極的に狙った平中の適時二塁打で先制。先発の桑江は144球を投げて九回までマウンドを守り、試合を壊さなかった。「全員が気持ちを一つに、ベンチワークも駆使して相手を崩す野球ができるようになってきた」と主将の山口翔梧(2年)は手応えを口にした。 一方で、らしくない5失策を犯し、うち三つが失点に結びついた。ミスを見逃してくれない全国トップレベルの力を知り、すべてにスキルアップが必要なことも骨身にしみて分かった。チームの誰もが、次の目標である春の大舞台に向け、明るい表情を見せていた。 その5日前。大阪桐蔭戦への前哨戦となった、高田商(奈良)との準々決勝は、この大会から背番号「1」を背負った桑江が一本立ちしたことを証明する試合となった。横の変化球スライダーに頼っていた従来の投球パターンから脱却し、カットボール、シンカーといった縦の変化球がさえ、勝負どころで相手打者を空振りさせた。被安打5、与死球1で三振6個を奪う安定した内容で、初めて公式戦で9回を完封した。奈良県大和高田市出身の桑江は、「以前のチームメートがベンチに5人いた」という。「2勝して次のステージへ進む」という強い決意で、急成長した姿をかつての仲間たちに見せつけた。 打線もエースの好投に応え、府大会優勝の乙訓を1回戦で完封した相手投手を序盤で攻略。1回戦と同様につなぐ攻撃で、二回に4安打、三回は2安打と四死球を集めて計4点を奪い、しっかりと試合の流れをつかんだ。 一度どん底へ落ちたものの、試合を重ねるたびに一歩一歩、前へ進んでいった龍谷大平安ナイン。いくつもの壁にぶつかった。厳しい練習の冬を経て、冒険の春へ旅立つ。【矢倉健次】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽2022年秋季近畿地区大会準々決勝 龍谷大平安 031000100=5 高田商 000000000=0 ▽同準決勝 大阪桐蔭 002020001=5 龍谷大平安 100000020=3 〔京都版〕