パリオリンピックのケニア戦がラストマッチに 日本女子バレーにとって古賀紗理那とは
彼女はバレーを考え、感じていた。冷静と情熱の間を、たゆたうように戦い続けたのだろう。キャプテンとエースの重責を同時に担った。 眞鍋政義監督も、その点を激賞していた。 「古賀はこの大会(パリ五輪)だけでなく、日本のエースとして、キャプテンとして、2年3~4カ月の間、よくやってくれました。特に(パリ五輪出場をかけた)ネーションズリーグの1カ月半はそうですね。初めはどうなるのか、と思っていましたが、キャプテンという役職が人間を成長させるんだな、とつくづく思いました」 眞鍋監督は、選手に苦言を呈すことも少なくなかったが、チームを託した古賀には満点を与えていた。文句をつけられない実力と献身だったのだろう。日本女子バレーのひとつの時代を背負ったヒロインだ。 ただ、古賀本人にとっては孤高の戦いだったのではないか。彼女は双肩に重荷を背負いすぎていたようにも映る。どこかで悲壮感が漂った。解き放たれた古賀は、どんなバレーをしたのだろうか。 取材エリアで古賀は、自らの"ラストマッチ"への質問は興味を示さず、「いつもどおり」と流していた。 「(五輪は)苦しい試合ばかりでした。でも、オリンピックの出場権を獲ったのも私たちで、みんな、自信を持ってやったらなって思います」 最後に絞り出した言葉は、自分に続く者たちへのエールだった。
小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki