なんと「雲と霧」、気象学的には「同じもの」なのに、その「発生プロセス」は全然違っていた!
コラム―飽和水蒸気圧
まわりくどくなるので、さらりと説明したが、「飽和水蒸気圧」について、少し補足説明をしておく。 水を熱すれば水蒸気となって蒸発する。だが、熱しなくても大気には水が水蒸気として含まれている。放っておけば、水はその上限に達するまで大気の中への自然蒸発を続ける。この上限を飽和水蒸気圧、という。 飽和水蒸気圧は温度が下がると減少する。大気の温度を下げると、大気の中に含まれることのできる水蒸気量の上限が下がり、溶け込んでいた水蒸気が過剰になって水に戻る。冬の朝などに結露といって窓の内側がびしょ濡れになっているのは、温度が高い室内の空気に含まれた水蒸気が、外の気温で冷やされた窓ガラスに接して温度低下する結果、水に戻って窓に付着する現象が起こるからである。 なんで、大気中に含まれる水の量なのに単位が圧力なのか、というと、大気圧のうち、どれくらいが大気中に溶け込んだ水蒸気によるものかという割合が、大気中に溶け込んだ水蒸気の圧力で決まっているので「圧力」と表現されている。 これはこんなふうに考えるとわかりやすいだろう。同じ体積の2つの容器に2種類の同温同圧の気体が入っているとする。一方の気体をもう一方の気体が入っている容器に押し込むと、当然、圧力は2倍になる。この2倍になった圧力の半分は一方の気体の寄与であり、残り半分はもう一方の気体の寄与であると考えることができる。 逆に言うと、2種類の等量の気体が混じっていると、その混合気体の圧力の半分は1種類目の気体の、残り半分の圧力は、2種類目の気体の寄与だと考えることができる。これは2種類の気体が半々でないときも成り立つ。 たとえば、2種類の同温同圧の気体が、1対2で混じっていれば、圧力の3分の1は一方の気体で、残りの3分の2はもう一方の気体だとみなせる。このことから、気体の混合比を圧力比で表現することが一般的に行われている。
田口 善弘(中央大学理工学部教授)