『ぼくのお日さま』が描く“3人組”の孤独 池松壮亮×越山敬達×中西希亜良の“目線”に注目
『きみの色』とモチーフが重なる『ぼくのお日さま』
本作の面白いところは、“3”という数字の孤独を上手に描いているところです。ハリー・ニルソンは、代表曲「One」で「One is the loneliest number(1は最も孤独な数字)」と歌っていましたが、1人でいるとき、人は案外孤独を感じにくいものです。 ところが、3人組には常に孤独が付き纏います。たとえば、ファミレスのボックス席。2:1で向かい合うように座ったとき、みんなで仲良く話しているように見えても、1の席にいる人の視線は、残り2人のどちらか片方に偏って注がれます。 本作でも、この視線の不均衡さが、3人の関係性を面白く見せています。氷上のさくらを熱心に見つめるタクヤ、コーチの荒川にほのかな恋心を抱くさくら、教え子であるさくらよりも、不器用なタクヤを気にかける荒川。言葉よりも雄弁に、目線が3人の感情を物語ります。 さらに、本作を彩るのが光の美しさです。物語の舞台となるスケートリンクは、時間帯による光の色と差し込み具合によって、同じ場所とは思えないほどさまざまな色合いを見せます。光と色、踊る少女、男女混合の3人組、出会いと旅立ち……モチーフ的にも『きみの色』と重なるところが多く、この2作を映画館ではしごして観るのも面白そうです。 本作は、北海道の長い冬が明け、春になるシーンで幕を閉じます。『ぼくのお日さま』を手がけた奥山大史監督は、日本人として史上最年少で、カンヌ国際映画祭のある視点部門に選出されました。先週公開された『ナミビアの砂漠』の山中瑶子監督と並び、日本映画界に新たな季節をもたらしてくれるであろう人です。そんな若き新鋭のきらめきに満ちた作品を、ぜひ映画館で観てみてください。
花沢香里奈