え、まだやる気なの…主人公役の織田裕二不在でも「踊る大捜査線」の新作を作り続けるフジテレビに思うこと
■もうすでに踊らなくなった大捜査線 他にも、聴けばすぐに頭に浮かぶ劇中音楽、モノマネしやすいキラーフレーズなど、「踊る」が築き上げた世界観は耳にも残った。そして今でこそ主演級の俳優が犯人役や被害者役などのチョイ役で出演したことも、長く語り継がれる理由ではないかと思う。国民的アイドルグループの犯人役起用も話題を呼んだ記憶もある。 ドラマ版(連ドラ+SPドラマ)では、篠原涼子、小池栄子、松重豊に水川あさみ、渋川清彦(KEE名義)に阿部サダヲ、古田新太、仲間由紀恵など。全員、のちに地上波の連ドラで主役を演じた俳優たちだ(放火犯で宮藤官九郎もいたね)。 映画版では佐々木蔵之介や眞島秀和、津田寛治やムロツヨシなどが捜査員として紛れ込んでいるし、木村多江は看護師役で、神木隆之介は掏摸一家の息子役で出演している。 そうそう、「踊る」の頃は清楚系女優で柏木雪乃を演じた水野美紀が、紆余曲折を経て、令和ではすっかりコメディエンヌ&アクション俳優になったしね。 初期は街おこしのお祭り騒ぎで始まり、映画のヒットで花火を打ち上げまくったものの、織田裕二は出なくなり、いかりや長介も小林すすむも他界した。主要キャラがやむなく卒業した後、懲りずに風呂敷を広げてきたものの、「踊る」の文字が踊れば踊るほど、人々の関心は薄くなっていった感もある。 フジテレビの番組と強制的に融合し、次第に「踊る」の文字も消えていった。踊らなくなったのである。 ■もう誰も終止符の打ち方がわからない 役者もキャラクターも長期間かけて育てる作品はなかなか生まれにくい時代、「踊る」がフジテレビにとってレジェンド&レガシーになったことは間違いないが、すがり続けるのは悪手ではないか。 役者陣もこの20数年で、他に主演作や代表作を生み出したし、「踊らにゃ損」ではなくなった令和に踊れと言われてもね。 ところが、まだまだやる気。え、まだやる? 柳葉敏郎主演の新作映画は二部作で展開中(ギバちゃんの義理人情で成立したか)。ここまでくると意地。そう、意地なのだ。織田裕二が出るまで続けるのか。いや、織田裕二も意地でも出ないか。2027年までやり続けて30周年までもっていきたいのか(テレビ局は「○周年」が何かと好きだから)。もう誰も終止符の打ち方がわからないまま、今に至る。 ---------- 吉田 潮(よしだ・うしお) ライター 1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。 ----------
ライター 吉田 潮