「勝負ではなく生贄」道長の幼い娘・彰子の入内工作。道長・倫子のブラック化と気になる台詞【光る君へ 満喫リポート】
価値観の異なるまひろと宣孝
I:さて、貧しい子供たちに施しをするまひろ(演・吉高由里子)に対して、宣孝(演・佐々木蔵之介)が冷たい態度をとったのが印象的でした。 A:現代的には冷たいようにも感じますが、当時の貴族の感覚としては、宣孝の態度がスタンダードのような気もします。第26回冒頭で宣孝の財力を見せつけていたので、敢えて指摘しますが、夫である自分の了承を得ずに貧しい子らへ施しをするまひろに対して「?」と感じたのかもしれません。 I:なるほど。私はそこまで気がつきませんでした。むしろ、宣孝が悪びれることもなくまひろからの文をほかの女性に見せていたことを話していたことに衝撃を受けました。 A:すれ違いというか価値観の相違というか、こういうのは1000年経ってもなくならないですね、というシーンになりました。「怒った顔もかわいいぞ」という宣孝は、事態を軽く見ていたようです。 I:火に油を注ぐ展開になりました。「難しい女だ。せっかくほめておるのに」という台詞も価値観の違いを浮き彫りにさせました。その後、清水の市でもっと若い女性と購入したという反物を持ってまひろのもとを訪ねますが、まひろは憎まれ口をきいてしまいます。 A:「多淫は体によくないそうですよ」と言っていましたが、「たいん? 何?」と思った人も多かったのではないでしょうか 。 I:多淫ってなかなかいわないですから活字にならないとわからなかったかもしれません(笑)。ここで宣孝は「そういうかわいげのないところに左大臣様も嫌気がさしたのではないか」と言ってはいけない発言をしてしまいます。 A:まひろが、怒りに任せて、宣孝に灰をぶちまけてしまいました。ずいぶん派手にやったものです。さすがの宣孝も参ったのではないでしょうか。蛇足になりますが、このシーンNGの出せない緊迫した状況下だったのかと思ったりしました(笑)。
石山寺に現れた男性
I:ここで、まひろの発案で石山詣でに出かけることになりました。京から石山寺までは約20キロの行程。乙丸(演・矢部太郎)といと(演:信川清順)に加えてそれぞれのパートナーも同行するというものです。冒頭でも宣孝の財力について触れられていましたが、みんなで旅行ができるようになったのは宣孝の財力のおかげでもあるような気もします。 A:確かにそれは否定できないですね。 I:そういう状況の中で、観音経を唱える一行でした。やがてひとりになったまひろのもとへ、扉が開いて男性が入ってきました。一瞬宣孝? と思いましたが、道長でした。なんで? なんで? と思いましたが、以前の廃邸での逢瀬の時みたいに、背後にはキラキラしたものが散っていて、幻想的。まるで夢うつつのような設定でした。 A:演出が「あの廃邸での夜」の回と同じ黛りんたろうさんですからね……。そして次回予告で猫が一瞬登場しました。 I:予告に登場した猫は白黒猫。キジシロの小麻呂(演・ニモ)ではありませんでした。その正体も次週明かされるということでしょうか……。道長とまひろの恋の行方、新たな猫、こんな重大なことが描かれる回なのに、東京都知事選挙で1週お休みだそうです。なんという仕打ちでしょう。私は納得いきません! A:まあまあ。熱心なファンにとっては試練ですが、黙して待ちましょう。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。 ●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。 構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり