非公認はつらいよ…政権放送NG、ビラ枚数の大幅減 候補者「背水の陣」
政見放送にも出られず、アピール力低下
また、選挙カーについて候補者個人は1台までとなっているが、政党・政治団体は各都道府県内に擁立した候補者数に応じて使用が認められる選挙カーが増えるため、公認候補になれば使える選挙カーの数も変わってくる。 さらに如実に差が出るのが、政策を訴える場となる政見放送だ。これは政党・政治団体にのみ認められており、9分以内に編集した映像をテレビで放送できる。公認候補ならこの映像に登場したり、詳しいプロフィルを紹介してもらったりすることが可能だ。しかし、無所属の候補は氏名や年齢、経歴のみの放送に限られ、アピール力は弱まる。 資金面でのハードルも上がる。自民党の場合、公認候補には500万円程度の公認料と小選挙区に立候補するための供託金300万円が出るとされるが、非公認になると公認料がもらえず、供託金は自分で用意しないといけない。
比例復活なしでも「気持ちは一緒」と経験者
経験者は非公認での選挙戦をどう感じたのか。 「公示直前に突然、公認では立候補できないことになりました。ポスターは刷り直しになり、党の選挙カーも使えません。物理的に不便でした」 こう振り返るのは、2017年衆院選大阪区に無所属で立候補した平野博文元官房長官(75)だ。平野氏はその頃、民進党(当時)の府連代表。民進党は選挙直前に希望の党(当時)との合流を決めたが、希望の党は日本維新の会が牙城とする大阪には維新との調整で候補者を擁立しないと決めていたこともあり、平野氏ら大阪の民進党候補13人は路頭に迷う危機に追い込まれた。 平野氏以外の12人は、枝野幸男氏らが結成した立憲民主党に移籍したり、他の選挙区にくら替えしたりするなどしたが、自身は地元から無所属で立候補する道を選んだ。「それまで支えてもらっていた土地ですから。選挙戦が制限されることを承知のうえで、無所属で出馬しました。私の場合は『裏金議員』とは根本的に事情が違うでしょう」と振り返る。
平野氏は投開票の結果、自民党と日本維新の会の両候補を破り、無所属ながら当選を果たした。比例復活の道が閉ざされたことに不安はなかったのか。 「『復活当選になれば』という気持ちで選挙戦を戦う人はいないのではないでしょうか。気持ちの上では変わりません。私も選挙中は『金メダルを取らせてください』とお願いしました」と語った。【米江貴史、野倉恵】
※この記事は、毎日新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。