少年少女に見てほしい、タイ映画の佳作「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」 シネマプレビュー 新作映画評
「WALK UP」
シンプルさが特徴のホン・サンス監督らしく、舞台は4階建てのアパートのみ。主人公と女性たちとの関係をモノクロ映像で4章立ての物語に仕立てた。
第1章では映画監督のビョンス(クォン・ヘヒョ)がヘオク(イ・ヘヨン)所有のアパートに来る。第2章は、ビョンスとヘオク、ソニ(ソン・ソンミ)が2階で酒を酌み交わす。第3章は3階でビョンスとソニが暮らしている…と、章ごとに時間が経過し、舞台は上の階に移動する。
アパートが、まるで転落するビョンスの人生の4場面を積み重ねたように見えるのが面白い。彼の4つの過去、あるいは別次元の人生にも見え、奇妙な感慨を抱かせる。韓国映画。
28日から全国順次公開。1時間37分。(耕)
「プロミスト・ランド」
禁じられた熊撃ちに挑む男たちを描いた小説現代新人賞受賞作を、ドキュメンタリー映画「MATAGI-マタギ-」(令和5年)を撮った飯島将史監督が映画化。
山あいの集落。「熊撃ちをやろう」。兄貴分の礼二郎(寛一郎)から、自然保護を理由に禁じられた熊狩りの決行を持ち掛けられた20歳の信行(杉田雷麟)は、惰性で生きる日常を捨て、ともに山に入る。
杉田と寛一郎が、雪の残る春の山中を、ひたすらストイックに歩く。劇中音楽も、せりふすらほぼない。銃を構え身動きしない礼二郎の前へと熊を追う信行の絶叫、息遣いだけが山に響き渡るクライマックス。生命の躍動にひたすら圧倒される。
29日から全国順次公開。1時間29分。(健)