藤ヶ谷太輔・奈緒主演「傲慢と善良」モヤモヤした感情を見事に言語化 言葉でぶん殴ってくる原作の衝撃を味わって! 映画ならではの魅力とキャストたちの原作愛にも注目
推しが演じるあの役は、原作ではどんなふうに描かれてる? ドラマや映画の原作小説を紹介するこのコラム、今回は100万部超えのヒット作を原作にしたこの映画だ! 【映画版『傲慢と善良』の登場人物を見る】奈緒「地方出身ならではの恋愛観や価値観にも共感できました」出演者のコメントも掲載
■藤ヶ谷太輔、奈緒・主演! 「傲慢と善良」(アスミック・エース・2024)
原作は辻村深月の同名小説『傲慢と善良』(朝日文庫)。2019年の単行本刊行当初から「刺さる」と大きな話題を呼んだ作品だ。まずは原作のあらすじから紹介しよう。 婚活に精を出す西澤架は、元カノのことを引き摺りつつもアプリで知り合った坂庭真実と交際していた。付き合い始めて2年が経ったある日、真実は架にストーカーの存在を打ち明ける。ついにそのストーカーが部屋にまで来たと聞いて架は結婚を決意した。ところが幸せだったはずの婚約生活が断ち切られる。真実が突然姿を消したのだ。ストーカーに連れ去られた可能性も否定できず、架は真実の母とともに警察に届け出た。しかし真実の行方は杳として知れない。 懸命に手がかりを探す架は、真実が実家の前橋にいたときに見合いを世話した婦人やその見合い相手、真実の友人や姉などさまざまな人に話を聞く。そこに浮かび上がってきたのは「婚活」とは何かという現実と、架が気付かなかった真実の真実(ややこしいな! )だった。そして架は友人の言葉から、真実が姿を消した本当の理由に気付かされることになる。 というのが架の視点で語られる原作の第1部。第2部では真実の視点に切り替わり、彼女のこれまでと姿を消した理由、そしてその後彼女が東北の被災地にボランティアに行く様子が綴られている。ここまでは映画もだいたい同じだが、原作が「婚約者の失踪の陰には何があったのか」を関係者への聞き取りを通して解いていくというミステリ仕立てなのに対して、映画は原作の第1部と第2部をほぼ同時進行で描くことで謎解きの度合いを減らし、より恋愛ドラマに特化した作りになっていた。 大きな改変が見られたのはその後だ。原作では東北だったボランティア先が佐賀に変わっていたのはいいとして、その土地で真実が体験したことや架とのかかわり方が、原作と大きく異なるのである。おやおや、これはもしかして違ったラストが用意されてるのかな? と興味を惹かれた。なるほど、こう来たか。「違うけど原作のスピリットはしっかり再現されてた」とだけ書いておこう。原作既読組も、このラストは映画館で味わうが吉だぞ。