【社説】規正法の再改正 自民は改革案を練り直せ
衆院選の大敗は薬になっていないのか。国民の批判を浴びた政治資金問題で抜本的な改革ができないようでは、信頼回復は望めない。 28日に召集される臨時国会を前に、自民党が政治資金規正法の再改正について基本方針をまとめた。 積み残された検討課題をまとめたに過ぎず、全く新味がない。この期に及んでも、小手先の対応で済ませる姿勢に見える。 使途の公開義務がない政策活動費は、ようやく廃止を明確にした。政治資金の支出を監査する第三者機関の設置は既定路線だ。 規正法の再改正で焦点となる企業・団体献金の禁止には触れなかった。党内であまり議論にならなかったようだ。不可解でならない。 企業・団体献金の禁止は、30年にわたって先送りされている課題だ。 政財界の癒着がリクルート事件などを引き起こした反省から、1994年の政治改革で企業や団体が政治家個人に献金することが禁止された。新たに導入されたのが、税金を原資とする政党交付金制度である。 政党への企業・団体献金は5年後に見直すことにしていたが棚上げされ、政党は企業・団体献金と国民が負担する政党交付金の「二重取り」を続けている。 今こそこの問題に決着をつける時なのに、自民は相変わらず後ろ向きだ。 石破茂首相は、企業の政治活動の自由を認めた70年の最高裁判決を引き合いに「企業・団体も寄付は禁じられていない」と主張する。 判決が、巨額の献金による政治の金権腐敗の弊害を立法政策で対応すべきだと指摘したことにも着目したい。 たとえ合法であっても、企業・団体が献金の見返りを求めれば、政策がゆがめられる恐れがある。 野党の立憲民主党、日本維新の会、共産党などは禁止を訴えている。与党の公明党を含め、与野党協議で足並みそろえて自民に禁止を迫ってもらいたい。 そもそも、自民の派閥裏金事件に端を発した政治資金改革だ。自民が反省しているなら、事件の実態を解明し、厳しい改革案を示すのが筋だ。 与党主導で6月の通常国会で成立した改正政治資金規正法は「抜け穴」が多く、資金の透明性を十分に高められなかった。この対応が少数与党に転落した要因であることを忘れていないか。 自民の基本方針は、外交上の秘密や企業の営業秘密などを例に、党の支出を一部非公表とする余地を残した。 第三者機関の監査で正当性を担保すると説明しても、不透明なカネを温存することになりかねない。 裏金の発覚からはや1年になる。政治資金の改革をこれ以上長引かせてはならない。自民は基本方針を練り直して臨時国会に臨むべきだ。
西日本新聞