「iPad mini(A17 Pro)」レビュー--電話機能がないことを除けばほぼ完璧
電話機能は非搭載 5G、強力なA17 Proチップ、「iMessage」や「FaceTime」などのコミュニケーションツールを搭載しているにもかかわらず、iPad mini(A17 Pro)で電話ができないのは残念だ。iPad mini(A17 Pro)のWi-Fi + Cellularモデルの価格は649ドル(10万4800円)からとなっているので、無印のiPhone 16(799ドル〈12万4800円〉から)よりも手頃な選択肢だ。この価格差を考えると、AppleがもしiPad mini(A17 Pro)で電話機能を有効化していたら、魅力的な代替品になっていただろう。 iPad miniを耳に当てて通話する人はあまりいないと思うが、「AirPods」やBluetoothヘッドセット、特にノイズキャンセリングが改良された新しい「AirPods 4」や「AirPods Pro 2」と組み合わせると、使いやすいだろう。プライベートな環境でハンズフリーで使用する場合は、スピーカーフォンモードを有効にしてもいいだろう。Appleはソフトウェアアップデートで簡単に電話機能を有効にできるにもかかわらず、そうしないことを選択した。 タブレット市場の競合他社は多くの場合、LTE経由の通話機能を自社デバイスに搭載していることを考えると、電話機能が搭載されていないことは特に意外に感じる。iPad mini(A17 Pro)に電話機能があれば、真のオールインワンデバイスとなり、ユーザーがiPhoneの代替品としてiPad mini(A17 Pro)を購入する可能性もある。学生や旅行者、プロフェッショナルにとって、全てを処理できる単一のデバイスはゲームチェンジャーになるだろう。 ソフトウェアの制限 電話機能以外にも、ソフトウェアの制限が幾つかあるため、iPad mini(A17 Pro)は潜在能力を完全には発揮できていない。 FaceTimeとiMessage:どちらもサポートされているが、電話番号ではなく「Apple ID」を利用するため、従来の電話サービスの代替品としての有用性は限られている。ただし、ユーザーが同一の「iCloud」アカウントにログインしている限り、iPhoneで受信したテキストをiPadに転送することは可能だ。 「WhatsApp」:iPad版WhatsAppはベータ版(残念ながら、本稿執筆時点ではクローズベータ版)だが、公式ネイティブアプリはまだ提供されていないため、WhatsAppをコミュニケーションに利用しているユーザーの不満の種となっている。 「Instagram」と「X」:Metaはこの期に及んでもiPad版の公式Instagramアプリを提供していない。XはiPad(および「Mac」)のサポートにそれほど力を入れていないため、多くのユーザーがウェブ版を使用している。 「Apple Watch」の登録:iPad miniからApple Watchを登録したり、管理したりすることはいまだに不可能だ。つまり、Apple Watchをセットアップして設定するにはiPhoneが必要である。iPad miniが優れたデバイスであることを考えると、これは不必要な制限であるように感じる。 「CarPlay」:iPad mini(A17 Pro)はGPSと5G機能を備えているが、CarPlayをサポートしていない。ナビゲーションに使用することは可能だが、CarPlayがないため、車内での実用性は限定的だ。 ハードウェアの制限 ハードウェアに目を向けると、iPad mini(A17 Pro)のパフォーマンスは良好だが、まだ遅れを取っている部分も幾つかある。 「MagSafe」充電:iPad mini(A17 Pro)は前モデルと同様、充電にUSB Type-Cを使用する。USB Type-Cは高速だが、利便性という点ではAppleのMagSafeに劣る。MagSafeはAppleのエコシステムの定番機能であるため、iPad miniで採用されなかったのは残念だ。 eSIMのみをサポート:現行世代のiPhoneやiPad Proと同様、iPad mini(A17 Pro)も物理的なSIMカードスロットを備えておらず、eSIMのみに対応している。多くの地域では、これでも問題はないが、海外旅行時に物理的なデータ専用SIMカードを使うことを好む人やそうせざるを得ない人は、諦めるしかないかもしれない。eSIMが広くサポートされていない国で、SIMカードの交換という迅速かつ柔軟な手段を講じている人にとって、この制限は特に不便である。 単一のカメラ:1200万画素の背面カメラは堅実な性能を備えているが(前世代のiPhone、「iPad(第10世代)」、iPad Airに搭載されているカメラと同じ)、iPhoneのデュアルカメラシステムほどの汎用性はない。このことは、写真撮影や動画撮影にiPhoneやiPad Proを利用するプロのクリエーターにとって、より大きな制約となるだろう。 「Apple Pay」のNFC決済は利用できない:オンライン購入にApple Payを使用することは可能だが、店舗での非接触型決済に必要なNFCがまだサポートされていないため、ユーザーは決済の際に物理的なカードを取り出す必要がある。 衛星経由の緊急SOSは利用できない:「iPhone 14」「iPhone 15」、iPhone 16では、緊急時に衛星経由で緊急通報サービスにテキストを発信できるが、iPad mini(A17 Pro)のWi-Fi + Cellularモデルでこの機能を利用できるのかどうかについて、Appleはマーケティング資料で何も明かしていない。 「ゼリースクロール」問題が発生する可能性:iPad mini(第6世代)では、「ゼリースクロール」問題がユーザーを悩ませた。これは、ディスプレイの左右で画面の書き換えのタイミングがずれることが原因で、表示が崩れる問題だ。Appleは、ゼリースクロールがiPad mini(A17 Pro)で修正されたかのどうかを明言していないため、一部のユーザーはディスプレイの品質を懸念している。有機ELディスプレイを搭載したiPad miniが開発中と報じられているが、発売は2026年になる見通しだ。