ゴリラ研究で知られる山極壽一さんに、「奄美」で行くべき自然スポットを聞いてみた
奄美ではこんなものを僕は見ましたよ
奄美では、モクセイシダを見るといいですよ。とても背か高くて、シダの怪物みたい見えます。電柱のように背か高くて、低い森の中で目立つんです。低い中にしゃきっと電柱のように見上げる形で視界に入って、かっこいい。 それから、奄美の東大医科学研究所に勤めて40年間ハブを研究してきた服部正策さんと、奄美で川沿いを一緒に歩いたんですけど、川そばの景観は見所が多かったです。夜のカエルの鳴き声が独特でした。見られないけれど、聞こえてくるんです。カエルは何種類もいますが、奄美大島と加計呂麻島にだけいるオットンガエルとか、奄美大島にしかいない日本一美しいとも言われるアマミイシカワガエルとかアマミハナサキガエルなど固有種も多い。のんびりと歩くのが本当に気持ちよかった。
時々、夜に車で走っていると、アマミノクロウサギがモコモコっと道路のそばを歩いていて、あれがまたかわいいんですよね。昼間に見るなら鳥がいいでしょうね。民宿で餌箱を設けて、鳥が来るのを見せているところがあるので行ってみるといいですよ。カワセミはもちろん、アカショウビンとか、奇麗な鳥がたくさんやってくる。奄美には、オオトラツグミやオーストンオオアカゲラ、ルリカケスと天然記念物の鳥がいて、鳴き声だって聞こえることもある。 奄美の樹木は低くて小さいけれど、実は樹齢は重ねています。樹木は大きさではない、と、そういう見方をするといろんなことが分かってくると思います。服部さんのように40年もいるといろんな秘密を知っているんですよ。地元の自然をよく知っている人と歩くと、同じものを見ても変わってきます。 良いガイドさんは、見えているものを解説するよりも、見えていないものを解説するのがうまく、それが力量でしょう。同じ樹木を見ても、どういう虫がやってきて、その虫目当てにどういう鳥がやってきて、だから、というのを解説してくれるから、それが物語になって残っていく。単なる木だと思って見てきたものが、昆虫のすみかだったり、鳥や爬虫類の戦いの場所だったり、そういう裏話をしてもらうと自然の見方に深みが出てきますよね。