[ハリウッド・メディア通信] ティム・バートンが米ハリウッド殿堂入りを果たしウォーク・オブ・フェイムに名を刻んだ ! 新作『ビートルジュース ビートルジュース』の話題
バートン監督の創造性を刺激した女性たち
監督は連れ合いが変わるごとに、それぞれ作風にも変化が見られる。モデル出身のリサ・マリーと交際中で、作品作りのいわゆるミューズであったときの映画は『エド・ウッド』(1994)、 『マーズ・アタック!』(1996)、『スリーピー・ホロウ』(1999) とどの作品も独創性に富んでいる。その後、『PLANET OF THE APES猿の惑星』(2001) の撮影で出会った英国女優ヘレナ・ボナム=カーターと交際。『チャーリーとチョコレート工場』(2005) 、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(2007) 、『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)などスタジオ大作映画の醍醐味にあふれる豪華なプロダクションへと移行していった。 『ダンボ』(2019) での興行成績の不調のあと、バートン監督は初めてNetflixオリジナルシリーズ『ウェンズデー』の監督を務める。主人公ウェンズデー役の女優ジェナ・オルテガがはまり役で、その魅力あふれる演技を披露。ゴスロリなドレスで、骨なし人形のように踊るシーンが彼女を一躍スターダムに押し上げた名場面となりSNSでも爆発ヒット。『アダムス・ファミリー』をヤングアダルトな路線で描いたことで、一挙にZ世代のファン層を獲得し、シーズン2も待ち望まれている。 映画『スリーピー・ホロウ』の女優クリスティーナ・リッチもバートン映画のミューズの1人。そのほか、『ミス・ペリグリンと奇妙なこどもたち』(2016) 、『ダンボ』の女優エヴァ・グリーンもなかなかの存在感があった。2022年、ヘレナ・ボナム=カーターと別居後、現在、私生活を共にしているのが新作『ビートルジュース ビートルジュース』にも出演している伊女優モニカ・ベルッチ。ビートルジュースの元妻役で、監督が傾倒したイタリアのホラー映画巨匠マリオ・バーヴァへのオマージュのほか、ばらばらになったその体をホッチキスで繋ぎ止めるシーンなどは『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の愛しいサリーを思い起こさせる。あらゆる、なつかしい場面はファンサービスにも見られるが、意外とそれだけでもない。 『今作品は自らのためにもう一度作り直したかったのです。長年、この業界で映画を作りつづけた過程で失望してしまっていました。だから新たに初心にかえり、ものづくりの工程に恋をし直す幕開けがこの映画なんです。』と監督自身が初心にふりかえった理由をヴェネチア国際映画祭のスピーチでふれていた。幕開けのスタートは好調。他のリメイクと違って、監督自らが手掛け、手作り感を残した演出に、36年ぶりに成長した主人公を演じる俳優たちと新顔たち。さらに、おなじみの作曲家ダニー・エルフマンの音楽と「Day-O(Banana Boat Song)」など前作で使われた楽曲もカムバック。数多くの作品でタッグを組んできた衣装デザイナーのコリーン・アトウッドのコスチュームもまた色鮮やかで、ビートルジュースの名前を3回呼ぶとハロウィンは目の前かのように、ロサンゼルス店頭にも『ビートルジュース』ファッションが訪れている。
文 / 宮国訪香子