「アイツでは勝てない」「消極的な騎乗が」…競馬界の過酷すぎる“勝利至上主義”が悲劇を招く!いま落馬事故が続く「衝撃の理由」
命がけでレースに挑む騎手たち
競馬の騎手たちは、文字通り命がけでレースに挑んでいる。 4月10日、JRA所属の藤岡康太騎手が落馬事故により35歳で死去するというショッキングなニュースが日本中を駆け巡った。さらに4月20日の福島牝馬ステークスでは、吉田隼人、木幡初也が落馬して競走中止に。同日の京都4Rでは松山弘平、福島1Rでは荻野極、同2Rでは丹内祐次らも落馬した。 【写真】笑顔が消えていた…水原一平容疑者の変わりゆく表情 前編記事『なぜ競馬界で「落馬事故」が相次ぐのか…昨年との「大きな違い」と、G1ジョッキーを襲う「悲劇の理由」』でも指摘したように、先週の5月5日に開催されたNHKマイルカップでも、ルメール、岩田康誠、モレイラが最後の直線で斜行し、大事故を引き起こしかねない危うい場面があった。 こうした相次ぐアクシデントに、競馬ファンの間でもその原因を問う声が高まっている。
「アイツでは勝てない」…重すぎるプレッシャー
長年競馬を担当してきたスポーツ紙記者は、一連の事故について「たまたま不運が重なっている時期だとは思う」と前置きしながらも、こう指摘する。 「近年、騎手にかかるプレッシャーが大きすぎるという点は見逃せないと思います。 馬主の間で、以前より人気ジョッキーの取り合いが激しくなっている。 『アイツでは勝てない』『消極的な騎乗をする』というイメージが一度でもついてしまえば、あっという間に依頼がなくなってしまう。そのため、騎手たちは1つでも着順を上げるべく、タイトに内側を回ってこようと必死です。 たとえ危険だと感じても、攻めた騎乗をしなければならない状況に追い込まれているのが、落馬事故が増えた要因の一つではないかと思います」 どの騎手も厳しいコースをつこうとするため、内側のポジション取りが激しくなり、狭い所に密集して事故が起きやすくなっているというのだ。そして、それは馬主へのアピールの意味合いもあるという。
“いま勝っている”騎手に乗ってほしい
最近は特に、騎手の勝利数ばかり重視されるようになり、馬との相性など他の要素が考慮されにくくなっているという。 「今はリーディング(※騎手の勝利数のこと)が最も重視されています。騎手のエージェント間では、2~3週前の時点で『この騎手は〇日に京都、×日は福島にいる』というリストが出回るようになっており、どこの競馬場にどの騎手がいるかが事前にわかっている。 重賞レースともなれば、馬主も“いま勝っている騎手”に乗ってほしいわけです。そのため、馬主がそのリストを見て『この騎手が当日空いているなら』と、単純にリーディングの上から順番に選んで依頼することが増えているのです」 たとえ新馬戦や未勝利戦からともに勝ち進んできた馬だとしても、騎手自身がリーディング上位にいなければ、大レースでは簡単にお役御免となってしまうのだ。 「落馬事故は色々な要因が絡んでいるものではありますが、吉田隼人騎手は例年に比べてリーディングが落ちており、少し調子が悪かった。焦る気持ちがどこかにあったのかもしれません」