暴走車両が35人をはね殺した戦慄の現場…もはや中国が隠蔽しきれない無差別テロ「報復社会」の連鎖
無差別殺傷事件が続発する「報復社会」
中国SNSがこの種の事件に敏感である状況は致し方ない。多数の海外メディアが報じている通り、今年の中国は無差別殺傷事件が特に多発している。日本にとって大きな衝撃だったのは、6月の蘇州日本人学校スクールバス襲撃、9月の深セン日本人学校児童襲撃だ。 だがこれ以外にも、北京などで暴走車事件が連続発生(3月)、湖北省で喧嘩により9人死傷(5月)、吉林省で米国人4人が刃物で負傷、上海の地下鉄駅で3人が刃物で負傷(ともに6月)、上海のスーパーで18人が刃物で死傷(9月)、広州市の小学校前で3人が刃物で負傷、福建省の小学校前で炎上した暴走車により9人死傷、北京市の小学校前で5人が刃物で負傷、浙江省で2人が刃物で負傷(すべて10月)……など、驚くほどの件数だ。 中国SNSではこうした無差別殺傷を「報復社会」と称している。詳細な動機などが正式発表されない事件が多いものの、多くは経済的 困窮などによる“現状への不満“が爆発したケース、いわば「社会への報復」ゆえに犯行に及んでいるからだ。
なぜか削除された「容疑者の背景」
珠海公安は2つめの「警情通報」で、前述の死傷者数に加え、車内にいた容疑者が刃物で自身の首などを自傷し意識不明に陥っていること、離婚後の財産分与に対する不満が動機に関連しているとみられることなども明らかにした。同日にネットで出回った容疑者らしき人物の治療記録は、警察発表の内容と一致しているという。 だが、この「警情通報」なぜかその後、内容を改変したバージョンに差し替えられた。「離婚後の財産分与に対する不満」はそのままだが、先のバージョンにあった、基層人民法院(最下層の裁判所、一審)と中級人民法院(二審)で訴訟を起こしていたこと、一審と二審の判決を不服として再審を申し立て、現在は審理が進行していることがばっさり削除されていたのだ。 容疑者の不満はあくまでも「財産分与の結果」に対してであり、裁判の判決、ひいては国の法制度に対してではないということなのか……など、様々な声があるものの、いずれも憶測の域を出ない。 13日、中国外務省の定例会見で林建報道官は「(中国は)犯罪率が最も低く、世界で最も安全な国の一つ」と強調した。容疑者が一命をとりとめた場合、動機の詳細は明らかになるのか。いずれにせよ、隠し切れない大事件となったいま、当局が今後いかに対処していくのかが注目されている。 デイリー新潮編集部
新潮社