暴走車両が35人をはね殺した戦慄の現場…もはや中国が隠蔽しきれない無差別テロ「報復社会」の連鎖
隠し切れない大惨事
珠海公安が最初の「警情通報」(事件の公式発表)を公開したのは事件当日、発生から数時間後のことだった。11月11日午後7時48分頃、スポーツセンター内で1台の車が多数の通行人を轢き、警察と救急が急行。運転していた容疑者の62歳の男が警官に身柄を確保されたという内容だ。過去の無差別襲撃事件を踏まえると、これ以上の詳細が発表されるかどうかは未知数だった。 一方、中国SNSでは前述の動画が瞬く間に拡散され、投稿が制限されるまでの間に「海外勢力の仕業」を指摘する投稿も出現する。その一部が根拠としていたのは、事件の翌日から珠海で始まる第15回中国国際航空宇宙博覧会(中国航空ショー)への妨害だ。また「社会不安につながる投稿は控えて」と呼びかける投稿も複数確認されている。 ある中国メディアが11日夜の初報を削除するなど、中国内の報道が制限される中、日本を含む海外メディアは、負傷者数を「10人以上」あるいは「20人以上」と報道した。この数字は、負傷者が搬送された病院の1つがその数を回答したことから出たようだ。ただし、現場の動画はとても20人に見えず、中国SNS上でも100人という説が流れていた。
習氏「激怒」でも“報道とSNS”を注視
珠海公安が2つめの「警情通報」で「35人死亡、43人負傷」という数字を発表したのは、事件から約24時間後の12日夕。これと前後して、習近平国家主席は被害者のケアや犯人への厳罰、事件の再発防止などを求める「重要指示」を出し、事件は正真正銘の“大事件”となった。台湾メディアはこの重要指示を「習氏の激怒」と報じている。 こうした当局の動きに合わせ、報道は“一部解禁”されたようだ。北京日報などは、中央政治局委員・広東省委員会書記の黄坤明氏が事件発生直後に特別会議を、12日午後にも全国の地級市以上を対象とした会議を主宰し、習氏の重要指示を徹底するように求めたと報じている。また中国SNSでも、当局の対応を伝えるメディアの投稿が確認できる ただし、“解禁”はあくまでも一部。日本のTBSを含む海外メディアが現場前での撮影を試みた際、何者かに止められるという事態も発生した。台湾メディアの報道 によれば、ネット上には「一般人のふりをした政府の監視」と指摘する声があったという。また、13日にはスポーツセンター正門前の献花が撤去され、訪れた人たちへの取材も制限されるようになった。 さらに中国で閲覧できないX(旧Twitter)には、中国SNS上ではやはり、事件の社会的背景や政府批判につながりかねない内容が削除されるという報告が相次いでいる。