クアルコムのインテル買収打診「成否は不透明」、アナリストが指摘
米半導体大手インテルの株価は、同業のクアルコムが同社に買収を打診したとの報道を受けて9月20日以降に上昇したが、アナリストはこの買収が実現するかどうかに疑問を呈している。 インテルの株価は、米国時間23日にも3.3%上昇して22.56ドルに達し、過去5日間では3.84%高を記録している。しかし、同社の株価は年初から約53%下落している。 直近のインテルの株価上昇は、ここ数日の2つの報道を受けてのものだ。ウォール・ストリート・ジャーナルは20日、同業のクアルコムがインテルに買収を打診したと報じた。また、ブルームバーグは22日、米投資会社アポロ・グローバル・マネジメントが、インテルに最大50億ドルのエクイティ型の投資を提案したと報じている。この金額は、20日の市場の終了時点でのインテルの時価総額の930億ドル(約13兆3000億円円)の5%強に相当する。 いずれの取引も、株価の下落に悩むインテルの投資家にとって喜ばしいニュースかもしれないが、時価総額が1900億ドルのクアルコムとインテルの合併は、実現不可能かもしれないと一部のアナリストは指摘している。 JPモルガンのアナリスト、クリスチャン・クロスビーは23日の顧客向けメモで、インテルとクアルコムの合併が「史上最大のハイテク企業の合併もしくは買収」になるかもしれないと述べつつも、「どのシナリオにおいても規制当局の承認を得るためのプロセスは、非常に時間がかかり、負担が大きい」と指摘した。また米中の緊張の高まりの中で、中国からの承認を得ることが難しいと付け加えている。 バーンスタインのアナリストのステイシー・ラスゴンらのチームも、これと同じ見方で、米国の当局は「自国のチャンピオン同士の合併」に好意的かもしれないが、中国での承認は「最低でも長い闘いになる」と指摘した。 一方、インテルがこのような劇的な買収提案を受け入れるかどうかも、まだ定かではない。バーンスタインのアナリストは、現状のインテルがクアルコムへの「投げ売り」的な救済策に頼るほど、「絶望的な状況にあるとは思えない」と述べている。インテルは先月発表した15%の人員削減による大幅なコスト削減策や、CHIPS法による85億ドルの政府の補助金などを活用して、「生き残るための余地が十分あるはずだ」と彼らは指摘した。 ■AIブームに出遅れ インテルの株は、今年のS&P500で薬局大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスに次いで2番目にパフォーマンスが悪い株で、過去5年間では10番目にパフォーマンスが悪い株となっている。同社の株価の低迷は収益と利益の継続的な減少と、膨れ上がる債務という最悪の組み合わせから生じている。 ファクトセットのデータによると、インテルの今年の予想収益の524億ドルは2010年以降で最悪で、2020年の収益を33%下回ることになる。また、予想純利益の11億ドルは1992年以降で最低で、2020年の純利益から95%の減少となる。 老舗半導体メーカーであるインテルの苦境は、人工知能(AI)ブームの中で競合他社に追いつくのに苦戦し、市場シェアを失ったことが主な要因だ。同社の株価は、8月1日の決算発表の直後に25%以上下落して、1974年以降で最悪の日を迎えていた。
Derek Saul