高配当株は「儲かる」「やめとけ」…いったいどっちが正解? これから始める人が絶対に知っておくべき「リスク」と実際の「パフォーマンス」【資産1億円超えの兼業投資家が解説】
高配当株投資は本当に儲かるのか?
(1)日本株のパフォーマンス それでは、高配当株投資は実際儲かる投資手法と言えるのでしょうか?多くの人が関心のある事項であるかと思います。 下の[図表2]は、2023年5月の国内株式テーマ別投資信託の年率換算リターン(※)平均をまとめたグラフです。 (※)分析対象期間中における基準価額の年率換算リターン。収益分配金は再投資したものと仮定して計算。 [図表2]を見ると、高配当株をテーマとした投資信託は、期間1年でも期間3年でも一番良い成績を示していることがわかります。 特にここ1年の年率換算リターンは非常に高く、日経平均インデックスを13%以上超過しています。 一方、グロース株をテーマとした投資信託は、ここ最近苦戦していることがわかります。直近、グロース株が苦戦している要因としては、 (1)2020年3月のコロナショック以降、ネット関連企業を中心に、かなり割高な水準まで買われていたのが落ち着いてきたこと (2)世界的に金融の流れが緩和から引き締めへと変わり、利上げの影響を受けやすいグロース株が相対的に売られてきたこと などが考えられます。それでは、直近の期間以外では、高配当株投資はどのような成績を示しているのでしょうか? 下の[図表3】は、2000年~2011年において、高配当株をポートフォリオに組み込む高配当戦略を取ったときと、TOPIXとの収益を比較したグラフ・表です(「低成長・低金利時代の株式投資戦略」三菱UFJ信託銀行、2012年4月) この[図表3]からも、 (1)高配当戦略は12年中9年、TOPIXの収益を上回っている (2)TOPIXの収益がマイナスのとき、特に高配当戦略の超過収益は大きくなる (3)リスクも高配当戦略の方がTOPIXよりも低い ことがわかり、ここでも高配当株投資の優位性を読み取ることができます。
(2)アメリカ株のパフォーマンス アメリカにおいても高配当株のパフォーマンスは市場平均を上回る傾向にあることがわかっています。 下の[図表4]は、1957年~2003年において、S&P500採用銘柄を配当利回りの高い順から5つのグループに分類し(グループは1年ごとに再分類)、その中から「配当利回り最高」グループ、全体、「配当利回り最低」グループの年率リターンを算出して示したグラフとなります(『株式投資の未来』ジェレミー・シーゲル、日経BP、2005年11月)。 「配当利回り最高」グループのパフォーマンスは、S&P500採用銘柄全体や「配当利回り最低」グループよりも優れており、1957年に1000ドルを投資したときの2003年の資産額は (1)「配当利回り最高」グループ:46万2750ドル (2)「配当利回り最低」グループ:6万4930ドル と、7倍ほどの差がつくことがわかっています(「配当利回り最低」グループのパフォーマンスは、低いといっても元値からは約65倍となっており、現金を保有することに比べて十分優位ではありますが)。 また、「株式利回りの獲得」(MSCI、2015年12月)は、1927年~2015年におけるアメリカ高配当銘柄上位30%のパフォーマンスは、市場全体を年平均で1.5%上回っていたことを示すとともに、高配当株の特性について、次の指摘をしています。 (1)高配当銘柄のパフォーマンスは、例えば市場が危機に陥った(月間の下落率が8%超となった)時期に市場を年平均12.7%で上回るなど、景気後退期、景気拡大初期、株式市場の混乱期において特に優れていた (2)高配当銘柄のパフォーマンスは、金利3%以下の低金利・金利低下時に低くなり、低金利・金利上昇時や金利6%以上の高金利・金利上昇時に高くなる傾向にある(※)。 (※)超過収益率はそれぞれ、低金利・金利低下時:▼2.6%、低金利・金利上昇時: +2.4%、高金利・金利上昇時:+2.8%でした。 金利上昇時に高配当株のパフォーマンスが高くなる要因としては、金利上昇によってもグロース企業ほど借入コストは増加せず、業績への影響も限定的であることから、相対的に投資家の資金が集まってきやすいことなどが考えられます。 ここまで、高配当株投資のパフォーマンスについて見てきました。 もちろん、市場の状況によって投資手法ごとのパフォーマンスは大きく異なり、これらの結果だけを見て、「高配当株投資は他の投資手法に比べて大変優れている。皆さん!グロース株投資やモメンタム投資を止めて、今すぐ高配当株投資を始めましょう!」と言うつもりはありません。 ただ、高配当株投資は優れたパフォーマンスを示すというデータは豊富にあり、少なくとも他に引けを取らない有望な投資手法の一つである、と言うことはできるかと思います。 なのなの サラリーマン兼業投資家 ※本記事は『月41万円の“不労所得”をもらう億リーマンが教える 「爆配当」株投資』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
なのなの