道路は川と化し、屋内へ一気に濁流が…11月の大雨特別警報は全国初、季節外れの大雨に「命の危険感じた」 与論で24時間594㎜
鹿児島県・奄美地方は、暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で9日未明から明け方にかけて線状降水帯が相次いで発生し、気象庁は与論町に大雨特別警報を発表した。同町では、同日午前8時20分までの24時間雨量が観測史上最大の594ミリとなった。気象庁によると、11月に大雨特別警報が発表されたのは、2013年の運用開始以来初めて。 【写真】〈関連〉排水路ののり面がえぐれ、橋(手前右)や農道が崩落した現場=9日午前、与論町麦屋(同町提供)
7日の降り始めから9日午後4時までの48時間降水量は609.5ミリとなり、11月の平年値(1991~2020年)の5倍近く、年間の平年値の約3分の1が一気に降る記録的大雨となった。 鹿児島地方気象台は、与論町を含む奄美地方では10日夕まで局地的に雷を伴った非常に激しい雨が降る恐れがあるとして、土砂災害への警戒を呼びかけている。 9日午前2時40分に発表された大雨特別警報は同日午後2時に解除された。 同町によると同日午後5時現在、床上浸水は20戸、床下浸水は9戸発生。道路は32カ所で冠水し、土砂崩れによる通行止めは2件あった。民家近くでの土砂崩れも1件あった。 与論町の1自治体のみがある与論島は隆起サンゴ礁でできた島で、保水力が低い。険しい山や大きな河川がなく平たんな一方で、クレーターのようなくぼ地が所々にある。今回の大雨では農地のため池や排水路があふれ、行き場を失った水が中心部の茶花地区などに流れ込んだ。
鹿児島県は特別警報の発令を受けて同日、災害対策本部を設置。与論町に災害救助法の適用を決めた。 ◇ 与論町を9日未明、季節外れの記録的な大雨が襲った。住宅や宿泊施設、店舗の床上まで濁流が押し寄せ、至る所で道路が冠水。崖が崩れ、赤茶けた山肌があらわになった。「梅雨や台風シーズンでもない11月にこれほど降るとは」。8日から激しい雨に見舞われた住民は不安を募らせ、疲労感をにじませた。 冠水や浸水被害が相次いだ中心部の茶花地区にあるホテル青海荘には9日午前2時ごろ、1階のロビーや食堂に濁った水が一気に流れ込んできた。くるぶし辺りまで漬かるほどだったという。 川畑将一朗代表(34)は「道路から玄関までが高く、床上まで水が入ってきたのは初めて。いくら掃き出してもどうしようもなかった」と話した。同5時ごろ、ようやく水が引いた。 立長地区の観光施設「サザンクロスセンター」1階も8、9の両日浸水し、職員らが後始末に追われた。ヨロン島観光協会の町岡安博事務局長(59)は「台風で吹き込む雨水以外で建物の内部が水浸しになったことはなかった」と驚く。
激しくたたきつける雨で運転できないほどだった。「命の危険を感じた。あちこちで冠水し、道路が川のようになっていた」と振り返った。
南日本新聞 | 鹿児島