長時間の座り仕事…事務職や運転手は要注意 命にも関わるエコノミー症候群、メディカルカーで巡る予防医療の現場を訪ねた
脚の血流が悪くなることで、静脈に血の塊である血栓ができる深部静脈血栓症。エコノミークラス症候群とも呼ばれ、血栓が肺などに移動して血管を詰まらせると命に関わる場合もある。予防につなげようと、試薬品・医療機器販売の宝来メデック(鹿児島市)はメディカルカーによる移動検診事業を立ち上げた。霧島市で17日、長時間同じ姿勢でいることが多いタクシー運転手を対象にした検診を初めて実施した。 【写真】〈関連〉検査機器を搭載するメディカルカー=霧島市の旭交通
メディカルカーはワゴン車を改造。腕の血管の硬さや頸(けい)動脈の血流を調べる機器、足の血栓を検査する超音波診断装置を搭載する。主に検査技師が乗り込み、血栓が見つかれば血液検査し、医師の判断を仰いだ上で病院につなぐ。 深部静脈血栓症は、災害時の避難生活で発症リスクが高まるとされる。同社の平松佑麻専務(34)は、災害ボランティアとして各地を訪れる中で災害関連死を防ぐ取り組みの必要を感じたという。能登半島地震の被災地を1~3月、メディカルカーで訪問。医師らと各地の避難所を回り、実践を重ねた。 霧島市ではタクシー会社2社に出向き、旭交通では事務職を含む15人が検査を受けた。池田勝尚常務(53)は血栓が見つかったが、血液検査で「異常なし」と判断された。「思いもしなかった。血栓症になりやすいと分かっただけでも収穫」と、ほっとした表情を浮かべた。 能登半島で平松さんと活動し、今回の検査に参加した新潟大学大学院医歯学総合研究科の榛沢和彦特任教授(60)=心臓血管外科=によると、血栓が肺に到達する肺塞栓症で労災認定される運転手は少なくない。「肺塞栓症は急にはならない。予防には脚の小さな血栓を見つけ、適切な治療につなぐことが大切だ」と語った。
今後、本格的運用を目指す。平松さんは「血栓は検査をしないと見つけられず、何らかの症状が出た時はすでに体に大きな負担がかかっている。事務系職場などにも検査の対象を広げていきたい」と話す。
南日本新聞 | 鹿児島