特殊詐欺抑止の切り札 暴力団組長の「使用者責任」とは?
増え続ける特殊詐欺 5年で1万3000件超と倍増
ただ、特殊詐欺事件に関しては、冒頭の中村弁護士のコメントにあるように、グループ末端の「受け子」らが暴力団の「威力を利用」して現金を詐取したという認定は難しい。このため今回の被害者7人の弁護団は、末端メンバーの「組員が怖くて辞められなかった」という供述調書などをもとに、暴力団員が威力を背景にグループを支配していたとして組織トップの使用者責任を問えると判断した。 警察白書の2015年版によると、特殊詐欺は認知件数、被害額とも年を追って増え続け、10年の認知件数は6888で被害額は112億5千万円、続く11年は7216件で204億円、12年は8693件で364億4千万円、13年は1万1998件で489億5千万円、14年は1万3392件で565億5千万円となっている。 「今回の訴訟が特殊詐欺被害の抑止につながれば」と期待する声は捜査の現場でも多いという。中村弁護士は「潜在化する特殊詐欺撲滅に向けた大きなきっかけ」と評価した。 (フリー記者・本間誠也)