アジア人差別と批判殺到!アカデミー賞の“無視”騒動がアメリカ衰退をあらわしているワケ
ビリー・アイリッシュ、過去のアジア系への発言を謝罪
3年前、ビリー・アイリッシュがティーンエイジャーだったころに中国人を差別する言葉を発したり、アジア系の英語のアクセントをおちょくる映像がTikTokに出回りました。 するとアイリッシュはすぐに自身のインスタグラムに謝罪文を投稿。当時13歳か14歳だったこと、そして<当時はあの言葉がアジア人コミュニティを侮辱する言葉だとは知らなかった。>と釈明したのです。 子ども時代の言動をいちいちただすのもナンセンスですが、同時に多様性を尊重するアイリッシュのようなリベラルなアーティストの日常にも無意識の差別が入り込んでいる現実を突きつけられます。
偏った理解で日本でアジアに好意的な態度も
そして、差別を受ける側の声を作品に込めたのがリナ・サワヤマです。 「STFU!」という曲のミュージックビデオで、食事をしながらサワヤマと会話する白人男性の発言にあらわれています。日本食レストランの味を本格的にするためにアジア人を雇っていると言ったり、同じアジアという大雑把なくくりで、サワヤマ演じる女性とルーシー・リューが似ていると言って褒めた気になったりしているシーン。 これらの偏(かたよ)った理解によって日本やアジアに対して好意的な態度を示そうとする白人男性の姿こそがマイクロアグレッションだと訴えているのです。 また、ポッドキャストで英語のアクセントを茶化したりするなどアジア系への差別を繰り返した「The 1975」のボーカリスト、マシュー・ヒーリーをライブ中に糾弾したこともありました。 では、アジア系への人種差別の背景にあるものは何なのでしょうか? かつてのような黒人に対する差別とはどこが違うのでしょうか?
デキの悪い白人の子どもの親世代を皮肉った歌詞も
ポップス音楽で人種差別を最も多く取り上げ、深く考えてきたのが、映画『トイ・ストーリー』などの音楽で知られるアメリカのシンガーソングライター、ランディ・ニューマンです。 2008年のアルバム『Harps And Angels』に収録された「Korean Parents」は、発表当時から物議をかもしました。韓国系の児童の親が過度に教育熱心だと揶揄(やゆ)しているとして批判されたのです。 しかし、歌詞をよく読むと、ニューマンが皮肉を向けているのがアジア系ではないことがわかります。学校で成績上位に食い込めない白人の児童に、しつけに厳しい韓国人の親をどうぞ、と売り込む内容です。 この「親」というワードがミソなのですね。デキの悪い白人の子どもを育てた彼らの親世代の力不足を皮肉っているからです。 <偉大なる世代 君たちの親御さんは、決して偉大なる世代ではなかった もう聞き飽きた言葉だろうけど、でも君たちにはそうなれる可能性がある さあ、何が出来るかな 君たちと韓国人の親の力で>(筆者訳) つまり、ランディ・ニューマンは白人の凋落(ちょうらく)、ひいては“アメリカ帝国の没落”を、アジア系という彼らが最も軽んじている存在によって強調しているのです。