「イニング跨ぎ」と「満塁」、スペシャリストは誰?
今回の代表メンバーの中では松井裕、澤村(巨人)、増井(日本ハム)の3人が10度以上イニング跨ぎを経験しており、結果も上々。成功率は3人とも90%台だった。本来先発投手だからイニング跨ぎも大丈夫だろう、という発想が通用しないのは則本や大瀬良(広島・成功率81.8%)を見ても明らか。むしろシーズンでイニング跨ぎを経験しているクローザーを8回から登板させるという発想もあってよかったのではないだろうか。 次に満塁での登板についての調査結果が表2である。これは今シーズンの公式戦で走者が満塁の状態で登板した回数をまとめたものである。「成功」は登板から降板までに1人の走者にも得点を許さなかった回数、「失敗」は1人でも走者に得点を許した回数、「生還走者」は登板時に背負っていた走者のうち得点を許した走者の数、「生還率」は登板時に背負っていた走者に対する、得点を許した走者の割合である。例えば満塁で5回登板した投手の場合、背負っていた走者の数は15人、そのうち3人に得点を許していれば生還率は20%となる。数字は低い方が好成績だ。 最も満塁での登板が多かった投手は高宮(阪神)。ただその結果は成功3回、失敗5回で成功率37.5%、得点を許した走者の数は8人で生還率は37.5%、これは満塁での登板が3度以上あった19投手のうちそれぞれ8位と5位に当たる数字で、飛び抜けて良いとはいえないものだった。 最高の結果を残したのはイニング跨ぎでも紹介した武隈である。4度の満塁登板で得点を許した走者は1人だけ。成功率75%、生還率8.3%はいずれも19人中トップの成績だ。イニング跨ぎでの好成績と合わせて今後大きく注目したい投手だといえるだろう。登板回数が多かった投手では二保(ソフトバンク)もよい結果を残している。7回の登板で無失点だったのは3度だけ(成功率42.9%-19人中7位)だが、得点を許した走者数は6人で生還率は28.6%だった。これは大きく崩れた登板が少なかったことを示していて、満塁で登板する投手に期待される最低限の結果を確実に残せていたということになる。ほかに田島(中日)長田(DeNA)も良い結果を残していた。 ここまでで韓国戦で則本や松井裕が直面した状況での経験が豊富な投手を紹介してきた。もちろん毎試合今回の韓国戦のようなシチュエーションが発生する訳ではないし、シーズンで経験がなくてもこれらの状況に強い投手がいるかもしれない。ただ、シーズンの結果で選手を選考するということであれば、防御率や勝利数、打率や本塁打数といった目に見える数字だけではなく、限定された条件に対して実際に結果を残している選手、例えば1点差の試合終盤で盗塁やバントを高確率で決めることのできる選手や、左打者であればヒットだけでなく外野フライすら許すことの少ない左投手、そういったスペシャリスト達を印象ではなく、実際の試合で探し代表候補としてリストアップしておく、といった発想もあってよいのではないだろうか。 (株)日刊編集センター