「サブコン」が引っ張る建設株、製造業の国内回帰で市況改善の恩恵
(ブルームバーグ): 日本の株式市場で建設株が勢いづいている。政府の半導体支援や地政学リスクの高まりを受けて国内に製造拠点を回帰させる動きが活発化しており、利益率改善への期待につながっている。
特に強い動きが見られるのが「サブコン」と呼ばれ、建設工事の一部を担う下請け業者だ。送電の九電工や半導体向けクリーンルームを手がける高砂熱学工業の株価は過去1年で2倍超に上昇。大手ゼネコンでも鹿島が約90%の上昇となった。
米国と中国による覇権争いの激化に円安も手伝い、半導体関連企業を中心に日本で生産能力を増強する動きが顕著だ。熊本県に日本初の拠点を設けた台湾積体電路製造(TSMC)を筆頭に、北海道ではラピダスが次世代半導体の量産に向け工場建設を進める。信越化学工業は830億円を投じて群馬県に半導体露光材料の製造開発拠点を建設すると9日に発表した。こうした結果、建設市場の需給が引き締まっている。
大和証券の金丸裕美シニアストラテジストは、「着工単価が上がる一方、資材価格の上昇は一服していることから、ここから2-3年は利益率が改善してくるだろう」とみる。
日本銀行が1日に発表した企業短期経済観測調査(短観、3月調査)では、建設業界で値上げ機運がかつてないほど強まっていることが明らかになった。大企業・建設の販売価格の判断指数(DI)は過去最高を更新。2022年12月調査分をピークに低下基調をたどる全産業ベースのDIと逆行している。素材価格の落ち着きを受けて仕入価格DIは全体の動向に沿って低下しており、事業環境が急速に好転していることがうかがえる。
人手不足も手伝い、国内建設会社の「価格交渉力が上がってきている」とIFAリーディングの穂積拓哉最高投資責任者(CIO)は指摘する。
とりわけ状況が変わってきたのはサブコンだ。従来、ゼネコンに従う立場と見なされ不況期には買いたたかれることも多かったが、業界全体の需給が逼迫(ひっぱく)したことから立場が逆転、契約条件が悪ければ受注を断る状況になってきていると穂積氏は話す。