おぎぬまXのキン肉マンレビュー【コミックス第29巻編】~ブロッケンJr.の魂の煌めき、仲間の盾となりクランクアップ~
この巻でゼブラ・チームとの闘いがついに決着! そして超人血盟軍の激闘へとなだれ込むなか、ソルジャーという謎多き人物に秘められた真相にもいよいよ迫っていく展開へ! 【画像】おぎぬまX『キン肉マン』4コマ ●『キン肉マン』29巻 レビュー投稿者名 おぎぬまX ★★★★★ 星5つ中の5 キン肉族三大奥義から溢れ出る超必殺技感!? 前巻から続く王位争奪戦準決勝、キン肉マン&ロビンマスク組とゼブラ&パルテノン組によるタッグマッチですが、いきなり大きな見どころ。まだ見ぬ最後の新必殺技にしてキン肉族三大奥義のひとつ"マッスル・スパーク"をキン肉マンがとうとう繰り出してみせるのか......という手に汗握る場面からこの巻は始まります。 ここで注目したいのは、この超大技のセットアップ。本作にはこれまで多くの超人技が登場してきましたが、特に今回ストーリーのポイントにもなっているキン肉族三大奥義は、そのセットアップが他の技と比べても極めて念入りで長いのです。 それはキン肉マンのマッスル・スパークに限らず、マリポーサやフェニックスが既にそれぞれ披露したマッスル・リベンジャー然り。そして先に言ってしまうと、この直後にゼブラが披露するマッスル・インフェルノもまた然り。 いずれのセットアップ演出も、思えばこの時代にはまだなかった対戦格闘ゲームの超必殺技感が満載で、やがて大技に至るその初動が見えただけでワクワクする。初登場から長い年月を経た今なおこれらの三大奥義、技としての特別感は色あせていませんが、それはその演出の影響も大きいのではないかと僕は感じています。 とはいえ結局、火事場のクソ力を封印された今のキン肉マンでは技の完遂には至らず、逆にゼブラの繰り出す三大奥義マッスル・インフェルノをくらうという大ピンチ。しかもその後にいよいよ本領を発揮して、苛烈な攻撃を加えてくるのがゼブラの相棒、パルテノンです! 前巻レビューではバイクマンの魅力を熱く語らせていただきましたが、このパルテノンもなかなか見どころ多い強豪です。人体化石封じや神殿瓦礫崩しなど、まさにこの超人ならではといった唯一無二の技を多数備えているうえ、狡猾で老獪。まさに王を支える副将といった佇まい。本作の長い歴史のなかでも、こういうタイプの超人は珍しいのではないでしょうか。 最後は今シリーズで無双の強さを誇り続けるロビンマスクに倒されこそしましたが、そのロビンに全力を使い果たさせ退場させ、主君ゼブラをキン肉マンとのタイマン勝負に持ち込ませただけでも彼は十分、大きな仕事を果たしたことかと思います。 そしてひとりになったゼブラが語る哀しい過去。立身出世のために最愛の友を手にかけ、以降は金と名誉だけを頼みに生きることを誓った男。彼もまたマリポーサ同様、心に大きな傷を抱え、歪んだ信念のもと王位を目指した者でした。 しかも格闘技に関しては、あのキン肉ドライバーさえも易々と破って見せるほどの実力者。それでも王位を競うこの闘いはやはり、ただ強いだけでは勝ち抜くことはできません。 金で王位を買おうとした男は結局、友情でつながったキン肉マンたちの結束を破ることまではできませんでした。それどころか、実は彼が誇った究極奥義マッスル・インフェルノさえもまた、かつて自身が手にかけた最愛の友の優しさによって完成していた技だったのです。 つまり己の強さの根底にあったのは、自身も気づかぬ友情だった。キン肉マンに技を破られたことで、ようやく初めてその当時の友の想いに気づけたこの皮肉。王を継がんとする者に真に必要なものは何か......またもやその明確なアンサーが最後に提示されたこの試合もまた、最高に熱くて深い一戦でした。