日本企業の戦略 中国不動産不況がチャンスに【WBS】
中国の不動産市況の下げ止まりの兆しが見えません。不況は住宅だけでなく、オフィスの賃料の下落など不動産全体に広がっています。一方で、中国に進出する日本企業はこの不動産不況をむしろ好機と捉え、ビジネス展開を加速させる動きが活発になっています。 中国国家統計局が17日に発表した5月の主要経済指標。小売売上高は1年前に比べて3.7%のプラス。大型連休に伴う需要の高まりなどで伸び率が拡大しました。一方で、新築住宅価格指数は全国70都市のうち68の都市で、前の月から下落。不動産市場の低迷が続いています。 習近平指導部は5月、売れ残った住宅を地方政府に買い取らせる政策を発表し、不動産市場を下支えする姿勢を強めています。しかし中国国家統計局の劉愛華報道官は「政策効果が発揮されるまでには時間がかかる。依然として不動産市場は調整過程にある」とコメント。中国当局としては弱気の発言です。
不動産不況は住宅に止まりません。ジョーンズ ラング ラサールの調査によれば、北京のオフィス賃料は前の年と比べて11%あまり下落。ただ下落で新たなビジネスチャンスも広がってきています。 明治 北京は去年11月、オフィスを移転。場所は北京市内の中心部で変わらないまま、床面積はそれまでの2倍に。賃料も想定より2割ほど抑えられたといいます。 新しいオフィスについて中国人社員に聞いてみると「オフィスとして満点。清潔で眺めもいい。オフィス環境もいい」「違う部署の同僚と協力して仕事がしやすくなった。雰囲気が活発になった」と好評です。賃料を抑えられた分、内装などを充実。結果、従業員のモチベーションの向上に繋がったといいます。 「皆さんに少しでも長く働いてもらいたい。長く働いてもらうための環境を整備していくのは大事なことだと思う。今回はそこにこだわって事務所を借りた」(明治 北京の小関孝治総経理)
一方、オフィス移転の需要を捉えようと動き始めた企業がコクヨです。日本でも実績のあるショールーム型オフィスを中国で展開したのです。会議などに使う防音効果のあるボックスや、ワンタッチで高さを変えられる 机など最新式のオフィス家具を揃えました。 「自ら働いてみて、いいところ悪いところを体験し、それを客に伝えることをやっていきたい。『ショールーム』ではなく、『ライブオフィス』という形を中国で初めてとった」(コクヨ家具北京の押川宣比古総経理) このほか、広東省にある工場への設備投資を進める予定で、オフィス移転に伴うオフィス家具の買い替え需要の高まりに期待しています。 「海外事業を伸ばしていく。海外比率を高めていく。その中で中国という市場は外せない。伸び続ける市場だと捉えている。中長期的にも少しずつ広げていける可能性がある」(押川総経理)