日本が今よりもっと円安だった40年前と比べて、ずっと貧しくなった深刻な事情
そこで、任意の時点での「あるべき為替レート」を示すものとして、「絶対的購買力平価」が計算される。 「絶対的購買力平価」とは、ある時点において、世界的な一物一価を実現するような為替レートのことだ。 絶対的購買力平価としては、さまざまなものが計算されている。その1つに、イギリスの経済誌『エコノミスト』が作成する「ビッグマック指数」がある。 これは、ビッグマックの価格が世界で均等化するような為替レートを計算し、それを現実の市場為替レートと比較するものだ。最新の結果(2024年1月公表)を見ると、つぎのとおりだ。 日本でのビッグマックの価格は450円。アメリカでは、5.69ドル。これらを等しくする為替レートは、1ドル=79.09円。ところが、実際の市場為替レートは、147.86円。したがって、円は46.5%だけ過小評価されていることになる。 ビッグマック指数では、ビッグマックという商品だけを取り上げて計算している。ビッグマックは、世界中どこでもほぼ同品質のものと考えられるので、その価格を比較することには意味がある。
しかし、1つの商品だけで評価してよいのかどうかという問題がある。そこで、さまざまな商品のバスケットを想定し、その平均的な価格について世界的な一物一価が成立するような為替レートを計算することが考えられる。 ● OECDとIMFの計算では 購買力平価は1ドル=90円程度 このような購買力平価が、OECDとIMFによって計算されている(これら2つの指標は、ほぼ同じものだ)。 図表3-3に見るように、IMFの購買力平価は、1980年代の前半には、1ドル=220円程度であった。その後、円高への動きが続き、現在では1ドル=90円程度だ。 購買力平価が円高になったのは、日本の物価上昇率が、諸外国の物価上昇率より低いからだ。日本の物価上昇率が諸外国のそれより低ければ、為替レートが円高にならない限り、一物一価を維持することができないためである。 そして、こうしたことが生じるのは、日本が外国に比べて相対的に貧しくなっているからだ。これは、つぎのように考えると理解できるだろう。