トランプ2.0のキーパーソンになったイーロン・マスク、世界を戦慄させる「マスクの野望」
この説はもっともだが、それだけではないだろう。11月7日付『ニューヨークタイムズ』は、「イーロン・マスクはトランプ大統領当選者を助けた。どんなリターンを期待するのか?」と題した、やはり長文の記事で、こう記している。 ■ ペンタゴンにスペースXが乗り込む? <マスク氏はトランプ氏に対し、マスク氏のロケット会社スペースXの従業員を国防総省を含む政府高官として雇用することを望んでいた。スペースXの従業員を同社最大の顧客の1つである政府機関に送り込むことになるこの要望は、トランプ氏の選挙運動に1億ドル以上を投資し、自身のソーシャルメディア・プラットフォーム「X」でほぼ絶え間なくトランプ氏を支持するコンテンツを発信し、激戦州であるペンシルベニア州で候補者を代表して公の場に姿を現したマスク氏が得る利益の兆しである。(以下略)> ここで指摘しているのは、「マスクの軍事的野望」である。スペースXが、内部からペンタゴン(国防総省)に乗り込んでいくというのだ。 アメリカには、ボーイング、ユナイテッド・テクノロジーズ、ロッキード・マーチン……という名立たる軍需産業が屹立(きつりつ)している。彼らは長年にわたって、ペンタゴンと癒着してきて、新興のスペースXが入り込む余地は少ない。
■ 宇宙軍利権も当然、視野に そんな中、1期目のトランプ政権は、2019年12月20日に、宇宙軍(USSF)を発足させた。アンドルーズ空軍基地で行った宇宙軍創設の調印式で、トランプ大統領はこう述べている。 「宇宙は新たな戦闘領域である。アメリカの安全保障に重大な脅威が迫りくる中、宇宙におけるアメリカの優位性は、死活的に重要なものとなってくる。これまでは、(宇宙で)アメリカがリードしてきたが、いまだ完全に優位に立ったとは言えない。だが宇宙軍の設立によって、まもなく他の国を大きく引き離すことができるだろう」 このように、やはり「軍需産業に癒着していない」トランプ大統領も、新設の宇宙軍に、大いに期待をかけているのである。ライバルとなる「他の国」とは、中国とロシアを指すものと思われる。 実際、スペースXが、「宇宙軍利権」を獲得しようとしているのは、間違いない。すでに一部の入札で、事業への参入を勝ち取っている。 特に、連日激しい戦闘が展開されているウクライナ戦争で、ウクライナ軍は日々、スペースXが運用する衛星インターネットアクセスサービス「スターリンク」を利用している。スペースXが「スターリンク」をストップした日が、ウクライナが敗北する日と言われるほどだ。 そのため、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がトランプ氏に祝意の電話を入れた時にも、トランプ氏の傍らには、マスク氏がいた。すでに首脳同士の電話会談にも「参入」しているのだ。