利上げは「極めて慎重に行うべきだ」、時間的余裕ある-野口日銀委員
野口委員は、首相発言には「コメントを控える」としつつ、金融政策を巡る政治家の発言は「それぞれの観点から何が望ましいかを考えており、表明された意見はしっかり受け止めなければならない」とした。その上で、「いちいちわれわれが反応することは望ましくない。物価安定の目標を実現するためにどうするべきかという観点から、政策変更あるいはコミュニケーションを行う」と語った。
コミュニケーション
午前の講演では、物価目標と整合的なマインドセットが社会全体で確率されるには「まだ相応の時間が必要」であり、それまでは「何よりも、緩和的な金融環境を忍耐強く維持し続けることが重要だ」と語った。
日本経済は、ほぼゼロの物価と賃金の上昇率が常態化していた「ゼロノルム経済」から「ようやく離脱しつつある」と指摘。その中で、先行きの金融政策運営は「消費者物価の上昇率が賃金上昇を伴いながら2%近傍で安定しつつあることを慎重に見極めながら、現状の金融緩和を徐々に調整していくことになる」と説明した。
物価情勢については、輸入物価の上昇の影響が縮小しつつある中で、サービス価格が着実に上昇基調を高めてきたことを「極めて画期的だ」と強調。輸入物価上昇の価格転嫁から、賃金上昇を背景とした物価上昇に徐々に置き換わりつつあるとの認識を示した。
7月利上げ後の市場の不安定化は、問題の根底に「経済の現状に関する日銀自身の見方と、日銀の見方についての市場の認識との間の齟齬(そご)があったのではないか」と分析。その上で、今後の政策変更が市場の無用な混乱に結び付かないよう、コミュニケーション上の努力が必要不可欠だと語った。
他の発言
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Sumio Ito