「親の持ち物は9割がゴミ」…遺品で家族に迷惑をかけないための『60日で9割捨てる片づけ術』とは
悪質遺品整理業者によるトラブルが急増している
今年は日本人の5人に1人が後期高齢者となり、超高齢化社会を迎える「2025年問題」の年でもある。ここで主に語られる医療、介護、年金など社会保障の問題では、現役世代にかかる負担がますます大きくなっていくことが心配されている。一方で高齢者を家族に持つ人たちの間で現実的に大きな負担になっているのが「モノ」の問題だ。 【眼からウロコ】捨てられない…押し入れにパンパンの「思い出の品」をスッキリ手放すコツとは? 核家族になり、高齢者と離れて暮らすことが多くなったことで、近年では遺品などの整理を専門業者に頼むことも一般的になった。そんな中で、遺品整理業者をめぐるトラブルが急増しているのだ。「見積料金をはるかに上回る料金を請求された」、「立ち会わなかったらモノを勝手に全部処分された」など、国民生活センターに寄せられる相談はこの10年で3倍になったという。 「今の時代、モノが多いのが当たり前になっているからこそ、起きていることなのかなと思いました。特にシニア世代の方はモノを持つことが幸せという人も多いので、仕方がない部分はあります。でもやっぱり、残された家族がそういうトラブルに巻き込まれるのはちょっと悲しいですよね」 そう語るのは月間200万PVの人気YouTuber・ミニマリストTakeru氏だ。彼が祖母と叔父の生前整理をしたときの動画をアップしたところ、230万回以上再生される大反響となった。12月には著書『60日で9割捨てる片づけ術』(クロスメディア・パブリッシング)も上梓している。Takeru氏に「遺品整理」で遺族に迷惑をかけないための「生前整理」について聞いた。 ◆遺品整理ではほぼ9割がゴミになる 同書の中でちょっと衝撃的だったのは「親の持ち物は9割がゴミになる」という言葉だ。 「祖母と叔父の生前整理を経験して、現実として9割が不要なモノだったんですよ。生活に必要でないものが9割で、残りの1割は何かというと、介護や入院が必要になった時に持ち込めるもの。また、本人が亡くなった時に、その家に残されたものを遺族が残したいかというと、ほぼノーだと思うんですね。一部、思い出の品や貴重品などもあると思いますけど、ほとんどは要らないモノ。だから遺品整理でほぼ9割のモノがゴミになるというのはリアルな話かなと思います」(Takeru氏、以下同) 「ゴミ」と言われた本人としてはたまったものではないが、何か起こった時にその〝9割〟の始末をしなければならないのは家族なのだ。その時間的、金銭的、精神的な負担は、時としてはかりしれないものとなる。通帳や印鑑、土地の権利書などの重要書類などがどこにあるかわからないと、入院するときに家族が困ることにもなるし、亡くなったあとに相続などのトラブルも起きやすい。終活という意味合いではなくとも、元気なうちにある程度の生前整理をしておくことは必要なのだ。 Takeru氏によると、子供2人がいる4人家族で、持っているモノは平均で3000~5000個。そのうち普段使用しているモノは1000個ぐらいだという。では、捨てるモノを見きわめるにはどうすればいいのだろうか。 ◆1年以上使っていないものは手放す 「現在の生活でよく使うものを〝1軍〟、1年に数回ほどたまに使うものを〝2軍〟。そして、1年に1回使うかどうか、または2~3年以上使っていないものを〝3軍〟というふうに分類するんです。1軍、2軍のものが無くなってしまうと、生活は絶対不便になりますから、捨てる必要はありません。まずは3軍のものから手放すというのが、片づけ初心者の方やモノが捨てられない方にはおすすめの片づけ術です。 今の生活で1年以上使ってないモノは、手放したほうが間違いなくお部屋がスッキリします。定年を迎えられた方であれば、快適なお部屋で老後生活を楽しむことにも繋がるので、その点を見きわめると、お部屋はかなり片付くと思います」 とはいえ、アルバムや長年書き溜めたノート、記念品など思い出の品を手放す決心をするのは難しい。そういったモノの整理についてTakeru氏はこうアドバイスする。 「大前提として、とても大事なモノは捨てないでください。ただ、叔父の生前整理、祖母の生前整理をやってみて思ったのは、日記帳や手帳、ノート系のものは、重要なパスワードなどが書いてあるかもしれないから、 1ページ単位でチェックしなければならない。それは残される家族にとっては過酷な作業なんですよ。もし手放せないのであれば、重要な情報を書いていないものはボックスに入れて自分が亡くなったらそれごと捨てられるようにしておくといいと思います。 また、アルバムや思い出の品も優先順位をつけてトップ20や30ぐらいまで厳選する。たくさん持っていても押し入れにしまっているだけだから、無いのと同じなんです。他のモノを手放すことでトップ20の思い出がさらに輝き出すことにもなります」 しかし、これまでの人生で溜め込んできたモノは中高年以上の人ならば、かなりの量になるはず。いざ、整理しようとしても、何から手をつけたらいいのか呆然となってしまいそうだが……。 「あくまで僕の場合ですけど、まずはお部屋全体を見て全体の物量を把握します。ポイントとしては、片づけやすさとか、売るもの、捨てるもの、譲るものとかの分類をなんとなく頭の中でイメージして計画を立てていく。1年、2年計画でもいいので、ゆとりを持ってその人のペースで片づけられる計画を立てることが大事です」 大事なのは片づける人のモチベーションなので、全体を把握してしっかり計画を立てる。適宜休憩をはさむことも重要だそうだ。Takeru氏のおすすめとしては、貴重品や書類の整理など優先順位の高いものや場所から手をつけることだという。 ◆少ないモノで暮らすメリット たくさんのモノが必要かどうかというのは、あくまでその人の価値観によるものだ。とくに中高年以上の世代の人は、モノをたくさん所有すること、好きなモノに囲まれることが幸せだという人も多い。だが、Takeru氏は「あくまで僕の価値観ですが」と前置きをしたうえで、「モノを減らすことは不幸を減らすこと」だと語る。 「老後は少ないモノで生活するほうが、空間的な自由が大きくなります。災害時にもすぐ逃げられるし、高い場所に収納されているものを出す時にケガをすることもありません。また、家事もしやすくなります。家事時間が短縮されるから、自由時間が増えます。 また、少ないモノで生活できる状態では生活費も下がるので、年金生活でも十分に暮らせるようになったり、働かなければならなかったとしても少ない時間で済みます。さらに身内と住環境をめぐって衝突することも減るでしょう。 モノを減らすことで、お金がない、時間がない、家族との衝突が多いなどの不幸が減るんじゃないでしょうか。老後のさまざまなストレスを軽減するための、一つの手段としてモノを減らすということもありなんじゃないかなと思うんです」 新たな年明けに心機一転して、自分や親の身の回りのモノを整理してみるのもいいかもしれない。 ◆ミニマリスト Takeru ミニマリストYouTuber。ミニマリズムに出会って3000個以上のモノを手放し、月10万円で質素に小さく暮らせるようになったことが人生の転機に。本当の幸せ とは何かを模索し、「少ないことが、より豊かなこと」だと気づく。現在は、YouTube活動のみならず、全国各地のミニマリストを取材したり、ミニマリストオフ会を開催している。著書に『月10万円でより豊かに暮らす ミニマリスト生活』『月10万円でより豊かに暮らすミニマリスト整理術』(クロスメディア)がある。 『60日で9割捨てる片づけ術』(ミニマリスト Takeru・著/クロスメディア・パブリッシング)
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