関東大震災での朝鮮人虐殺犠牲者に「追悼文を」 横浜市は市民の要請に応じず
関東大震災直後、暴動を起こしているというデマによって虐殺された朝鮮人の追悼を行なっている横浜市の市民団体が、山中竹春市長に追悼文を寄せるよう求めている。関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会は昨年、横浜を中心に神奈川県内で145人が犠牲になったことを示す文書を公表した。山本すみ子共同代表は「朝鮮人なら殺してもいいという流言は軍警が広め、民衆による虐殺を後押しした。新たな証拠が明らかになった今こそ、過去への反省を自治体が示すべきだ」と話す。 横浜市立久保山墓地には遺体を目撃した市民が建てた関東大震災殉難朝鮮人慰霊之碑がある。毎年9月1日には横浜市長名で花が手向けられており、墓地を管理する市環境施設課は「殺傷があった記録は市史で確認できる。碑を建てた市民の思いを大事にしながら献花をしている」と説明する。 ならばもう一歩踏み込んで具体的なメッセージを発信してほしいというのが山本さんたちの願いだ。東京都では市民団体の式典に送ってきた追悼文を小池百合子知事が2017年から取りやめるという愚挙が続く。「都慰霊協会主催の大法要ですべての犠牲者を慰霊している」との説明は、震災死と虐殺死を同列に扱いでジェノサイド(集団殺戮)をなかったことにする官製ヘイトにほかならない。 横浜市も7月22日、山本さんたちの要請を断る回答を示し「市営墓地で管理している慰霊碑に献花することですべての犠牲者への哀悼の意を表している」と理由を述べた。献花こそ続けているが、歴史否定につながる危うさがのぞく。 山本さんは「在日コリアンへの差別が今もあるのは虐殺を反省してこなかったからだ」と引き続き市の発信を要請。二度と繰り返さないことを制度的に確かなものにする差別禁止・ヘイトスピーチ規制条例制定をあわせて訴えていく。
石橋学・『神奈川新聞』記者