初代NSXに存在した「やりすぎ」モデル! たった14台しか売れなかった「タイプS Zero」のストイックさに脱帽
タイプRよりもストイックだった
そんなNSXオーナーのニーズに、メーカーとして応えるべく開発されたのがNSXタイプS Zeroである。車名のとおりNSXタイプSをベースに、さらに締め上げられたハード仕様のサスペンションを採用。スプリングレートはタイプSのF:6.5kg/mm、R:5kg/mm に対し、タイプS ZeroではF:8kg/mm、R:6kg/mmとされた。 車体では遮音材などが除去され、エアコンやオーディオなどの装備はワイヤーハーネスを含めて非装着。つまり、オプションでも追加することができない。さらにNSX-Rと同じ軽量タイプのリヤスポイラーや軽量バッテリーの採用、シートの電動調整機構を運転席側のみとしたり、シート背後のリヤパーテーションガラスを1枚にするなどの変更によって、NSXタイプS Zeroの車両重量は1270kgに抑えられた。標準クーペに比べると、約96kgの軽量化を実現している。 その後、NSXは2001年に2度目のビッグマイナーチェンジが行われ、ヘッドライトがリトラクタブル式から固定式になるなど外観も大きな変更を受けた。結果的に後期モデルとなった固定式ヘッドライト車でもNSXタイプSは継続設定されたが、タイプS Zeroは姿を消した。そしてタイプS Zeroと入れ替わるように、2002年には約7年ぶりにNSX-R(NA2)が登場する。 NSXをベースに、「ワインディング・ベスト」を掲げてスポーツ性能を引き上げたのがNSXタイプSで、そのNSXタイプSから快適装備などを徹底的に削ぎ落としたのがNSXタイプS Zeroだ。その手法はNSX-Rとも共通する部分はあるが、快適装備の類はオプションでも一切装着することができないなど、ストイックさではNSX-Rを上まわる。 いわば「引き算の美学」を体現したNSXタイプS Zeroは、車両価格もNSXタイプSの1035万7000円に対して50万円安い 985万7000円とされた。しかし、あまりにもストイックすぎたことや生産期間の短さもあって、販売台数はわずか14台に留まっている。希少といわれるNSX-RでさえNA1が約480台、NA2は約140台といわれているだけに、初代NSXのラインアップにおいてもっともレアな存在であることは間違いないモデルだ。
佐橋健太郎
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