最も危険なのは「地方の学生街」…都市部の“駆け出し大家”がカモにされる〈高利回り物件〉トラップ【不動産投資のプロが解説】
都市部に住みながら、田舎の「高利回りアパート」を購入する不動産投資家は少なくありません。しかし、「初心者が安易に高利回り物件を狙うと、落とし穴にはまる可能性が非常に高くなる」と、不動産投資歴15年、家賃収入3億円超えの実績を誇る名取幸二氏と、一般社団法人マネー総合研究所所長の杉田卓哉氏はいいます。著書『不動産投資 絶対にやってはいけない39の落とし穴』より、その理由をみていきましょう。 【早見表】3,000万円30年返済の住宅ローン…金利差による利息分
「高利回り」はハイリスクの裏返しでもある
不動産投資において、高利回りの物件を狙うのは重要です。 ただし、高利回りはハイリスクの裏返しでもあります。初心者が安易に高利回り物件を狙うと、落とし穴にはまる可能性が非常に高くなります。 まず、高利回りアパートは地価の高い大都市の都心部にほとんどありません。地価の低い郊外や地方、田舎であることが多いのです。 「利回りが高い=物件価格が安い」ということですが、「安くしなければ誰も買わない物件だから安い」のです。 地方の場合は建物の状態よりも賃貸ニーズによるところがあり、田舎に行くほど賃貸ニーズは減り、入居者がまったく付かないおそれもあります。 そこで田舎の高利回りアパートを狙う際には、3つのポイントを押さえることが重要です。 【落とし穴回避策(1)】大学移転後の学生街や元企業城下町などは避ける 少子高齢化の波は住宅産業だけでなく、大学にも大きく影響を与えています。とくに不便な郊外や地方の大学は人気がないので、キャンパスをより都心に移転する動きがあります。 一般的に学生街は、学生需要を見込んでアパートがたくさん建っています。大学が移転した後には賃貸経営を継続するのが難しく、「安くてもいいから売却したい」というオーナーが多いため、割安な高利回り物件が出回るケースも多いのです。
田舎の高利回りアパートを狙う際の注意点
これは企業移転も同様です。いくら安くても、賃貸需要のない地域で不動産投資をするのは難しく、避けたほうがいいでしょう。 【落とし穴回避策(2)】入居者にとって魅力的な物件を提供することが必要 入居者にとって魅力的な物件の条件は、どんな入居者が住むのか、また、その地域の特性によっても変わります。 たとえば、地方で一家族に複数台の自動車が必須であれば、駐車場は2台以上の物件が魅力です。 また、都心であれば20平米に満たないワンルームにも賃貸需要はありますが、地方であれば、30平米以上ある単身向け物件が魅力ということもあります。 このように、その地域の入居者のライフスタイルに合わせた物件が競争力を持ちます。 そのほかにもエレベーターやオートロックなど便利な設備があると、入居者からのニーズを取り込むことができます。 周辺環境なら駅や商業施設、公園などが近くにある物件は入居者からの評価が高くなります。ただし車社会では、駅よりも道路の便利さが重視されることも多々ありますので、その地域では”何が魅力なのか“という需要を知るのがポイントです。 【落とし穴回避策(3)】地域の事情に明るい不動産投資家にアドバイスを受けることも有効 昨今の不動産価格の高騰から、自宅に近い物件や地縁のある物件だけを探しても購入することが難しいでしょう。 とくに東京を中心にした首都圏、大阪を中心とした関西圏では物件探しをしても「高すぎて購入できない……」という場合がよくあります。 そこで、投資対象を広げていくことになります。たとえば東京在住であれば、千葉・埼玉・神奈川までエリアを広げても買えないので、群馬・栃木・茨城などの北関東や、山梨・静岡までエリアを広げて探すイメージです。 地方になればなるほど高利回り物件はありますが、(1)や(2)を押さえないと購入後に苦労することになります。 田舎の高利回りアパートを狙う際には、入居者の要望や物件の魅力、そして地域の事情をしっかりと把握すること。また、不動産投資はリスクを伴うので、適切な情報と判断力をもって取り組むことが必要です。 そこで重要になるのは情報収集です。地元の賃貸事情に詳しい不動産投資家仲間などからアドバイスを受けるのが有効です。 ただし、話を聞くのは「現役のプレイヤー」に限定しましょう。いくら著名な投資家でも、市況がまったく違う時期に購入していれば、その情報は参考になりません。また、繰り返しになりますが、不動産会社の話を鵜呑みにするのは危険です。 名取 幸二 株式会社ペスカトーレ 代表取締役 杉田 卓哉 一般社団法人マネー総合研究所 所長
名取 幸二,杉田 卓哉