落合陽一さん「デジタル技術の活用で社会課題を解決したい」
聴覚障がい者のコミュニケーションを変革する
――開発した製品の中で最もインパクトがあったものは何ですか。 私たちはいくつかの製品を開発してきましたが、中でもビューボは聴覚障がいや聞こえにくさのある方と聴者のコミュニケーションを円滑にすることに特に影響力があります。ビューボは、会議や普通の会話などで、誰が何を言っているかを理解するのが難しい聴覚障がい者に向けた解決策です。 これまでの補聴器やスマホアプリでは難しかったコミュニケーションの問題を解決し、多くの人から喜びの声を得ています。 教育の場でも、ビューボは大きな変化をもたらしています。筑波技術大学(*2)では、学生同士のコミュニケーションをスムーズにするための取り組みを始めました。愛媛大学では、聴覚障がいのある学生がグループディスカッションに参加する際の支援ツールとして使われています。小学校の聴覚障がいを持つクラスでも導入が検討されています。 授業でのディスカッションやグループワークが増えている中、聴覚障がいを持つ子供たちが会話についていくのは難しいです。ビューボを使って、会話をリアルタイムで視覚化することで、この問題を解決し、すべての子どもたちが学びの機会をフルに活用できるように努めています。 (*2) 筑波技術大学は、日本で唯一「視覚・聴覚障害者であること」を入学条件とする国立大学
身体的・能力的な困難を克服し、生活を向上させる
――人々の生活を改善するための技術研究開発において、特に身体的・能力的な困難を克服することに焦点を当てた理由は何ですか。 私たちは技術開発において、特に身体的・能力的障がいを持つ個人が直面する困難の克服に焦点を当てています。このようなアプローチは、利用者の自立を促し、社会参加の機会を拡大することに寄与し、より包括的で平等な社会の実現に貢献します。私たちは異文化間の対話に魅力を感じ、それをきっかけにテクノロジーの探求をはじめ、身体的・能力的障がいの課題への取り組みに至りました。 私たちは、社会と自然が共生する持続可能な未来を構築することを目標にしています。「変革は常に我々の手の中にある」という信念を持ち、皆様と共により良い未来を創り出すために努力してまいります。 ■伊藤 芳浩 (いとう・よしひろ) 特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスター理事長。コミュニケーション・情報バリアフリー分野のエバンジェリストとして活躍中。聞こえる人と聞こえにくい人・聞こえない人をつなぐ電話リレーサービスの公共インフラ化に尽力。長年にわたる先進的な取り組みを評価され、第6回糸賀一雄記念未来賞を受賞。講演は大学、企業、市民団体など、100件以上の実績あり。著書は『マイノリティ・マーケティング――少数者が社会を変える』(ちくま新書)など。