永山則夫、連合赤軍など担当の大谷恭子弁護士死去
「少女たちは社会の鏡」
永田洋子らによる連合赤軍事件の裁判では、当事者たちが犯した深刻な過ちの原因には男女間の関係性の歪みがあったにもかかわらず、女だけを「化け物」のように描く判決や世論と対峙した。 この裁判では、女性革命家の生涯をよく書いていた瀬戸内寂聴に、永田の情状弁護を依頼した。これを機縁に、大谷と寂聴は生涯を通じて肝胆相照らす仲となった。寂庵の活用方法を話し合ううちに大谷は、かつて厚生労働省の官僚として、障害者に関わる制度改革作業をともにした村木厚子に助言を求めた。 その結果、寂聴、村木、大谷が2016年に呼びかけた「若草プロジェクト」は、貧困・虐待・DV(ドメスティック・バイオレンス)・性的搾取・薬物依存などで生きづらさを抱えた少女や若年女性を支援するものだった。早すぎた晩年、大谷は「少女たちは社会の鏡」と強調した。 土井たか子、倍賞千恵子などとともに神楽坂女声合唱団に属するなど、音楽をこよなく愛した。今年の10月中旬には、師事するピアノと声楽の教師が開く年に一度のボーカル&ピアノ発表会で、大谷がベートーベンの「悲愴」第2楽章をジャズ・バージョンで演奏し、「島原の子守唄」を歌うプログラムが組まれていた。夢かなわず、その日を数日後に控えて、この世を去った。 その発表会は「生徒~故大谷恭子さんを偲んで」と名づけられて、予定されていた日に実施された。大谷に音楽レッスンを施した教師が「悲愴」を演奏し、「島原の子守唄」を歌った。家族だけで営まれた通夜と同じ日のことだった。(文中敬称略)
太田昌国・評論家