平成ファッション史 ブランド信仰からカジュアル・低価格・機能性重視に
低価格と機能性……ファストファッション時代に
平成中期のトピックでは、「ユニクロ」が当時、数万枚売ればヒットと言われたフリースを大々的に展開。平成12(2000)年には50色の品ぞろえや1900円という価格のインパクト、CM戦略などが成功し、年間2600万枚を達成して社会現象化したことが挙げられます。また、「GAP」(米国)や「H&M」(スウェーデン)といった外資系のファストファッション店の上陸もあり、ファッションの流れは変わります。 ファストファッション系は、製造から販売までを一貫して行う製造小売業(SPA)のスタイルで価格を抑え、流行商品でありながら低価格の衣料品を大量生産、販売しています。ファストファッション定着後、低価格で機能的、しかし格好もいいというものを求める流れが続いています。 渡辺教授は「いかにもブランドというものを着る必要はないのではと、気づかされた面がある。機能的で保湿性が高く、着ていてストレスが少ないもの。クリーニングやケアが必要ないものを求める傾向になった。一度価格帯が下がると、それをまた引き上げるのはかなり難しい。着て楽ちんというカジュアル路線もなかなか戻れない。それが現在にも続いている」と指摘します。 ユニクロは平成15(2003)年に発熱保温する、薄くて暖かいインナー「ヒートテック」、同21(2009)年に軽量化を追求した「ウルトラライトダウン」ジャケットなども投入。同社の実験によると、冬のファッションは厚着で着ぶくれしていた平成初期に比べると、平成30年現在は機能性の高いアイテムが増えた影響で軽量化され、「約2.5キロからほぼ半減した」といいます。
「やり過ぎ」を避け、小さな差異で勝負
ファストファッションの国内店舗数は平成27(2015)年までの約10年間に倍増したともいわれ、日本人のファッションが低価格化、似たようなものを着用してきているという見方もあります。 渡辺教授は「最近の若者は『やり過ぎる』ことを避ける傾向があり、おしゃれ過ぎるものや、全身流行のアイテムで揃えるのは格好悪いという感覚が見られる。キメキメでなくバランス感覚が求められる。その中で小さい差異には敏感だ。白いTシャツを一つとってみても、襟ぐりが違うとか、ダボッとしたサイズのものを着ているというように、みんなとはちょっとだけ違うというところにこだわっている。服探しでも歩いて店を巡るより、SNSなどでさっとチェックする傾向が強い」とみています。