<センバツ・夢へ続け!>柴田/上 どん底からのスタート 「最弱チーム」監督の叱咤で本気に /宮城
◇全員が役割自覚し、短期間で成長 「新たなる夢実現」。センバツ出場決定から一夜明けた30日朝、柴田ナインは竹駒神社(岩沼市)で必勝を祈願した。例年なら年明けの練習始めに訪れているが、今年は出場校発表まで待った。主将の遠藤(2年)は絵馬にペンを走らせ、「代表としての自覚を持ち、柴田らしい守り勝つ野球で、甲子園で勝ち続ける」と誓った。 ◇ 秋の東北地区大会では県第3代表ながら、八戸学院光星(青森)など他県の1位校を倒し、創部35年目にして初めて甲子園出場をつかんだ。だが、半年前に結成された新チームの道のりは順風満帆だったわけではない。むしろ、どん底からのスタートだった。 「一番弱い。最弱チームだ」。昨年8月中旬のミーティング。10年間にわたり野球部を指導してきた平塚監督が、あきれ気味に言った。県大会を前にした練習試合で4連敗。練習中の雰囲気は悪くなかったが、試合になると結果が出ない選手ばかりだった。「勝負強さに欠け、大事な場面で点を取られていた」。副主将の横山(同)は振り返る。控えメンバーもベンチで沈黙することが多かった。 連敗、そして、監督の叱咤(しった)。これでチームに「本気スイッチ」が入った。ムードメーカーでもう一人の副主将、村上(同)らが「全員野球で勝つんだから、やれることやらなきゃだめだよ」と、部員全員にそれぞれの役割を自覚させた。横山が兄航汰さん(3年)に相談すると、「今は踏ん張る時期だよ」とアドバイスしてくれた。前主将の兄は、成長を続ければおのずと結果がついてくることを身をもって知っていた。ナインはミスが出ても引きずらないように、「次しっかりやろう」と声を掛け合うようになった。 そして8月下旬に開幕した県大会。1、2回戦はまだ手探りだったが、選手は試合を重ねるごとに自信を付けて3位で7年ぶりに東北大会へ。10月の同大会でも各県の強豪を相手に堂々とした戦いぶりをみせた。「とにかく目の前の試合に全力を尽くして、その結果が準優勝につながった」(遠藤主将) 短期間でまるで別のチームに生まれ変わり、平塚監督は「本当によく頑張った」。特に成長したと誰もが認めるのが主戦の谷木(2年)だ。夏の大会まではベンチ入りもしていなかった。それが秋の公式戦では計11試合をほぼ一人で投げ抜き、大躍進の原動力となった。 ◇ 第93回選抜高校野球大会への出場切符をつかんだ仙台育英と柴田。甲子園で最高のプレーをみせると誓う両校ナインを紹介する。【面川美栄】