イニングイーター健在を示した中日・大野雄大 「黄昏時」を振り払う147キロ直球
見事な「救い投げ」だった。 中日は8月18日、阪神とのカード3戦目で8-4と勝利。先発・大野雄大が7回3失点と試合をつくり、打席でも自らを援護する適時打をマーク。快勝劇を演出した。 【動画】大野雄大が好投で「バンテリンドーム通算50勝」 勝利を引き寄せるレフト前適時打を放ったシーン ■「長いイニングを投げる」ミッションクリア 今回の阪神戦、大野にかかるプレッシャーは大きかった。 初戦は小笠原慎之介が打球直撃、2戦目はウンベルト・メヒアが背信投球でそれぞれ早いイニングで降板。ただでさえ9連戦直後でブルペン陣の登板過多が指摘される中、複数のリリーバーが2イニングを投げる事態に。さらに2戦目は延長12回まで決着せず、ベンチ入り投手全員を注ぎ込んでいた。つまり、ミッションは「できるだけ長いイニングを投げること」だった。 その命題に大野は果敢に立ち向かった。失点を喫しても同じイニングで2点目を取られず、最少失点で切り抜ける粘りを見せた。 象徴的なのは4回のピッチング。無死満塁から梅野隆太郎に犠飛を打たれ、なおも1死一、二塁。ここから大野はギアを入れ直し、木浪聖也を外角カットボールで左飛、代打・渡邉諒を初球ツーシームで遊ゴロに仕留めてピンチ脱出を果たした。 終わってみれば7回3失点の好投。自ら適時打を放ち、打線の援護にも恵まれ勝利投手に。史上4人目となる「バンテリンドーム通算50勝」のオマケも付いてきた。ミッションクリアと言って良い。 ■大野の投球がドラゴンズを一つに 左肘手術明けの36歳シーズン。直球で押してきた大野にも「黄昏時」がやってきていた。 開幕早々に白星を掴むも、次の登板では炎上。ファーム行きとなった。奇しくも今回と同じ阪神戦での出来事だった。投球スタイルの軸を成す直球はスピードが上がらず、140キロ台前半を推移。2軍相手にも打ち込まれる場面が散見された。 交流戦明けにチャンスをもらうも、DeNA戦で再び炎上。ついに限界が訪れたのか。そう思ったファンも多かったことだろう。 それでも左腕が諦めることはなかった。先発陣の層の薄さから、8月初旬に1軍合流の機会を掴むと、3日の広島戦と11日の巨人戦でそれぞれ5回を投げ切った。かつての沢村賞投手の実績を思えばいささか寂しい内容だが、全力で腕を振り、直球を軸に投げ込んでいく姿は何も変わっていなかった。 迎えた今回の登板、なかなか越えられずにいた145キロをマーク。最速は147キロまで上がってきた。球数も110球と健在ぶりをアピール。夏場のイニングイーター復活は投手陣に好影響を及ぼすはずで、大野自身の「黄昏時」も払拭される方向になってきた。 チームは今季も厳しい状況が続き、クライマックスシリーズ出場の可能性が風前の灯となっている。だが、これからも大野の熱投がドラゴンズにまつわる人たちを一つにしてくれる。そう願ってやまない。 [文:尾張はじめ]