同姓同名でギネスの「タナカヒロカズ」さんら会社設立、 究極の縁故企業が目指す新経済圏
ただ、当面はタナカヒロカズ同士が抱える悩み事や課題を解決する事業で成功事例を積み上げ、その後に同士以外へ事業領域を広げていく計画だ。
すでに動いている事業もある。一つは、千葉県君津市にある明治6年創業の「田中醤油」の事業承継問題への対応だ。現在、大学生の「ブレザー」が事業を継ぐかどうかを判断する試金石として、新商品の開発をタナカヒロカズのチームで担う。
もう一つは、長野県須坂市で江戸時代から続く「田中本家博物館」を経営する「豪商」の依頼である、新型コロナウイルス禍以降に激減した来館者数の復活だ。タナカヒロカズのブランドを活用し、須坂市全体の地域活性化にも貢献する取り組みを模索する。
■究極の縁故企業
新会社は、事業に携わった各タナカさんに報酬を支払う業務形態を採用する。「『タナカヒロカズ』という名前ならば、誰でも参加できる〝究極の縁故企業〟」と田中社長。障害者であっても元受刑者であっても事業に携われるよう、門戸は広く広げる方針だ。「みんながタナカヒロカズというみこしを担ぐ感じでブランド価値を高めることが大事。タナカヒロカズなら誰でも加われるというダイバーシティ&インクルージョンを形成したいと強調する。
「面白い未来を作る」をスローガンとした新会社は、利益を追求せず、「同姓同名のコミュニティーの社会実験を楽しむ発想」というスタンスで事業を展開する考えだ。
タナカヒロカズであれば約1万円から同社の株式を購入でき、出資額に応じた配当が得られる制度も導入する。田中社長は、「名前というものが同じというだけでたまたま集まった共同体が自分の新たな居場所となり、そこでお互いが支え合うことで新たなコミュニティー経済圏が生まれるという発想がある」と話す。
ちなみに、同姓同名178人が1カ所に集まった「タナカヒロカズ」さんのギネス世界記録は、23年2月にセルビアで256人のミリツァ・ヨヴァノビッチさんに更新されており、田中社長は記録奪還に向けても意欲を燃やしている。(西村利也)