バレンシア戦、PK失敗も気持ちは折れず…その後1G1Aで劇的逆転勝利を導いた21歳ベリンガム「僕はこのチームのリーダーになりたい」
3日のラ・リーガ第12節延期分、レアル・マドリーは敵地メスタージャでのバレンシア戦に2-1で勝利した。この試合で1ゴール1アシストを決めたMFジュード・ベリンガムは、自チームがサポーターの望む姿を見せられたと満足感を表している。 逆境の中でも、勝つまで絶対にあきらめない……。このバレンシア戦で、ベリンガムはそんなマドリーの伝統的精神を見事に体現していた。 前半はバレンシアの堅守速攻に苦しみ、FWウーゴ・ドゥロの先制点を許したマドリー。後半からパフォーマンスの質を上げたものの、逆境は続いた。FWキリアン・エンバペが獲得したPKをベリンガムが失敗、エンバペのゴールはオフサイドで取り消され、さらにFWヴィニシウス・ジュニオールがGKストレ・ディミトリエフスキへの暴行行為で一発退場となっている。 だが、それでもマドリーとベリンガムはあきらめなかった。執念と強靭さが混ざり合ったハイプレスでバレンシアを圧迫したアウェーチームはまず85分、ボックス手前のベリンガムのスルーパスから途中出場のMFルカ・モドリッチが同点弾を記録。そして96分には、無理な体勢でパスを受けたMFウーゴ・ギジャモンのボールをベリンガムが奪い、冷静な右足のシュートによって、今度こそネットを揺らしている。ゴール直後、コーナーへと駆けて行ったイングランド代表MFは、左胸のエンブレムをつかんで、熱い口づけをしていた、 動揺しそうなPK失敗後も前を向いて、攻守にわたってしっかり貢献したベリンガム。カルロ・アンチェロッティ監督も試合後、「最後の30分間のプレーは彼にしかできない。懸命に働き、前線でエンバペを助けて……凄まじかったよ。彼はゴールを決めるにふさわしかった」と手放しで称賛する。そして『レアル・マドリーTV』とのインタビューに応じた選手本人は、チームメートたちの存在、そして不撓不屈を根幹とする“マドリディスモ(マドリー主義)”を何よりも強調したのだった。 「これが僕たちが示すべき意思の強さだ。今日のチームこそ僕たちが求めている、ファンにふさわしいマドリーなんだよ」 「PKを失敗したとき、チームメートたちは怒ることだってできただろう。だけど、彼らは自分を元気づけてくれた。僕たちはレアル・マドリーとしての意思の強さを示したんだ。真っ向から立ち向かって、ラ・リーガの優勝を争う上で本当に大切な勝ち点3を獲得することができた」 「このエンブレムをつけていれば、あきらめることは絶対に許されない。今日、僕たちはレアル・マドリーの一部である意味を示したのさ」 今季序盤こそゴールから遠ざかるなど攻撃面で存在感を失い、守備に奔走することが多かったベリンガムだが、アンチェロッティ監督がトップ下に近い役割を与えたことで前線でも躍動する姿が見られるように。ラ・リーガでは初ゴールを決めた第13節オサスナ戦以降、8試合で7得点4アシストを記録する暴れっぷりで、チームを上昇気流に乗せている。 類い稀なテクニックやフィジカルのほか戦術眼にも優れており、守備が必要なときに戻らないエンバペやヴィニシウスを叱責できる気の強さも持ち合わせ、自分がPKを失敗してもすぐに立ち直ってチームを勝利に導ける……。ベリンガムはリーダーに必要なすべての要素を揃える存在だが、それは本人も自覚しているようだ。 「今日は攻撃でも守備でも良いプレーを見せられた。家族と過ごしたクリスマスバケーションが新年に立ち向かうエネルギーと決意を与えてくれたんだ」 「僕はこのチームのリーダーになりたい。今夜はそのことを示しせたんじゃないかな」 このバレンシア戦のハーフタイム、ロッカールームからピッチに続くトンネルで、ベリンガムは苦手だというスペイン語を駆使し、手を叩きながら仲間たちにこう話しかけた。「GKまでプレスをかけるんだ」「もっと、もっとだ! さあ行こう、行こうぜ!!」。それはまさしくリーダーとしての振る舞い。21歳とまだまだ若いベリンガムだが、その両腕を広げるゴールパフォーマンスは、どんどん神々しさを増している。まるで、どんなプレーでもこなしてしまう、すべてを抱きかかえてしまう器の大きさを示しているかのように。 文=江間慎一郎