【オーストラリア】セブンイレブン、豪州に日本のノウハウ投入
セブン―イレブンは世界展開を加速するに当たり、オーストラリアを最優先市場とする――。セブン&アイ・ホールディングスが強調した。同社は今後、2023年11月に買収したオーストラリアのコンビニエンスストア運営「セブン―イレブン・オーストラリア(豪セブン)」に対し、品ぞろえ強化、出店加速、単品管理の導入などに日本で培ったノウハウを投入し、市場リーダーとして圧倒的な地位の確立を目指すという。【オセアニア農業食品専門誌ウェルス編集部】 豪セブンは今後、オーストラリアで主流のガソリンスタンド併設型コンビニから脱却する。海外事業を統括するセブン―イレブン・インターナショナルLLC(SEILLC)会長で、オーストラリアに駐在する阿部真治氏はIR説明会で、従来の「給油のついで買い」対応型の品ぞろえを抜本的に改善し、コンビニ本来の品ぞろえである「消費者の生活必需品」をカバーできる品ぞろえを目指すとした。 同社が品ぞろえを強化するのは、成長に直結するからだ。現在の豪セブンの粗利益は11億8,500万豪ドル(1豪ドル=約102円)で、うち42%がガソリン販売による。給油需要に依存しない収益モデルを確立することで、出店可能地域が大幅に増やす。品ぞろえの強化を出店の加速につなげ、現在の東部州を中心とした775店の店舗網を拡大し、店舗密度を引き上げる戦略という。 阿部会長は「オーストラリアの食品市場において、スーパーからシェアを奪いたい」と述べた。 ■魅力的な成長市場 オーストラリアのコンビニ市場規模は約60億豪ドル規模で、豪セブンのシェアは32%と1位だ。だが消費者1人当たりのコンビニでの購買金額は約2万円と、日本の約5分の1にすぎない。また1店舗当たりの人口も、日本の5,780人に1店に対し、オーストラリアは3万4,574人に1店にとどまっており、成長余地が大きいという。 また同社は、人口動態の見通しが良好なこともオーストラリアを戦略的重要市場とする理由とした。人口が増え平均年齢も若く子育てファミリー層が多い消費者層を背景に、「市場規模の拡大と、競争力強化によるシェア拡大により事業成長を図る」とした。 ■品質の高い食を重視 セブン&アイの広報部は豪セブンの買収について編集部に対し「『食』を中心とした世界トップクラスのリテールグループを目指すというビジョンの下、グループ全体のシナジー効果の創出を目指すもの」とした。食のバリューチェーンを強みとし他社との差別化を図る同社は、オーストラリアでも品質の高い食品の供給を重視する考えだ。今後はホット飲料を軸にフレッシュフード商品や、質の高いプライベートブランド(PB)商品を拡充する。 また、現在の1店舗当たりの商品数は約1,500品と日本の約2分の1にすぎず、同社の競争力の源泉とも言える単品管理が未導入な点も今後の成長が期待できる領域という。投資によりワンストップで消費者の需要を満たすアイテムを増強する一方、単品管理の導入を中心に店舗運営システムを改善し、売り場効率を向上させることで拡大を支えるもくろみだ。 このほか、同社は日本のベンダーとも協力体制を整え、情報を共有しているとした。セブンと共に海外進出に関心を示すベンダーもあるという。 ■「スナック菓子の店」から変革 こうした日本側の戦略の下、豪セブンのマッケイ最高経営責任者(CEO)は現地の小売業フォーラムで「豪セブンはかつての『チップスとチョコレートの店』ではなくなっている」と述べた。すでにガソリンを除く売上高の約3割をフレッシュフードが占めており、今後はその割合をさらに高めるという。 一方同氏は現在のオーストラリアの市場動向について「消費者は利上げと横ばいの賃金、生活コスト増加という累積的な重荷に苦しんでいる」と指摘した。小売業界については「エネルギー支出が裁量的支出をさらに侵食する可能性があり慎重だ」とした一方で、利下げにつれて消費者の行動は通常化するという楽観的な見方もあると述べている。 同氏は日本のセブンの店舗について「高い水準でシームレスに運営されており、学ぶべき点が数多くある」と述べ、「オーストラリアの店舗も世界的に定評のある日本の店舗に様相が似てくる」とした。